【MUJI×UR イベント】団地雑談の会-団地遊びから育むコミュニティ-(後編)

MUJI×UR団地レポート | 2025.6.18

※このレポートは、2025年4月19日(土)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

【MUJI×UR イベント】団地雑談の会-団地遊びから育むコミュニティ-(前編)の続き

Part3:これからの団地にあったらいいもの ①MUJI×URの取り組み

松枝
フロリダでのお話にコミュニティとういうキーワードもあったので、そちらも踏まえて、これからの団地にあったらいいものや感想・ご意見いただければなと思うのですが、コミュニティという視点で、MUJI×URの住戸についてと最近始めた取り組みについてまずご紹介できればなと思っています。

豊田
MUJI×URの具体的な取り組みについて少しお話をさせていただきます。
先ほど、上原さんがお住まいになられたお部屋の間取りと近しいお部屋のリノベーション事例を紹介させていただきたいと思います。

元々の間取りが右下となり、大体同じような3DKの間取りのお部屋をMUJI×URでリノベーションを行った間取りがこちらです。
上原さんがお住まいになられていた時は4人家族でお住まいになられていた方が多かったとおもいますが、最近は2人か多くて3人で住まれることを想定してリノベーションをしています。
部屋の壁を抜いて3部屋がつながるようにして、リビングダイニングキッチンとしてつくり変えたプランとなっています。「ホール」と呼んでいるのですが、ホールと洗面・洗濯機の間に少し壁を追加して空間が分かれるような形にしています。

実際の写真がこちらです。壁を抜いて3つの部屋がつながったことにより、風通しと陽当たりが今までよりもより感じることができるような間取りになっています。
こちらはリビングから寝室に出るときだけ使われる部屋の方向を見た様子ですが、ここにあったふすまも全て取り外して一体的に使えるようにリノベーションをしました。

上原さんがおでこや頭をぶつけていた鴨居ですが、お客様から取りたいというご意見をいただくこともあるのですが、MUJI×URでは団地の象徴として残した方が面白いのではないかということで、つけたままの状態にしています。「飴色に変化した木部」と私たちは言っているですが、50年前の木の雰囲気をそのまま感じて頂けるようにしています。

こちらも先ほど上原さんに紹介をいただきました「麻畳」になります。
MUJI×URは若い方向けにリノベーションを行っているため、通常のい草の畳は縁があったりしてどうしても古めかしいイメージになってしまうのですが、縁なしにして畳自体を強化することで、ベッドやソファ、机やテーブルなどを置いてもへこみにくくなっています。MUJI×URでは「麻畳」のようにデザイン性も機能性も備えているような建材も開発をしていてMUJI×URの住戸に展開をしています。
グランフロント大阪のモデルルームもですが、お布団ではなくてベッドにすることが多くなっています。実際にご覧いただいて、どうでしょうか?

上原
団地じゃないって感じました。
マンションの一室みたいに見えますよね。

岩田
私もMUJI×URの立ち上げメンバーの1人なのですが、豊田さんから鴨居を残したいという話をいただいた当時はすごい議論になり、「取る派」「残す派」で意見が分かれました。ちなみに私は鴨居を「取る派」だったのですが、結果的には豊田さんがおっしゃる築50年の年月がつくり出した唯一無二の飴色になってきているということもあり、取ってしまえばそれで終わりですが、残すことでまた次の展開も考えることができるだろうということで残すことにしたのですが、MUJI×URに入居される方にはこれがかえって好評だったりします。
先ほどのMUJI×URでリノベーションをしたお部屋ですが、リビング側から寝室を映していますがストレートに風が抜けるように設計を考えていただいいます。

上原
窓を開けると風が通って気持ちがいいのはいいですね。

岩田
エアコンもつけて頂けます。

上原
今の時代危ないので安心ですね。

岩田
豊田さんから紹介をいただいたのがMUJI×URの住戸となるのですが、これからの団地のことを考えて共用部のリノベーションの取り組みも行っています。

上原さんからお話しいただいたように、こどもたちが野球やサッカーをしたり、場合によったら兄弟喧嘩をされたりしていた場所ですが、団地にとって共用部は非常に魅力ある空間だと、皆さんからも評価をいただいていますし、管理をしている我々もそう思っています。

2023年にMUJI×URのアンケートを実施したのですが、団地の公園や集会場などの共用部が活用されたら良いと共感してくださっている方が多くいらっしゃいました。

その一方で、地域資源の活用の取り組みについて具体的に行っていることがあるのかやコミュニティに参加することについて聞いてみると、興味はあるけれどどう行動したら良いのかが分からないため何もしていない方々が非常に多い状況となっていることが分かりました。時代背景や小家族化などの影響もあるのかとは思うのですが、共用部の活用にも目を向ける必要性を感じました。

先ほど豊田さんから説明をいただいたのが「MUJI×UR団地リノベーション」で団地の住戸のリノベーションを、2012年から始めているのですが、先ほどのアンケートの結果を受け、2021年から「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」を開始しました。

上原さんのお住まいになっていた寝屋川団地も当てはまるのではないかと思うのですが、団地は地域の中でもコア的な存在になっていると考えています。
団地を拠点として、地域生活圏を活性化していこうということで、団地の共用部にも手を入れて行く活動をMUJI×URとして行っています。

具体的な取り組みについてですが、全国4か所で実施をしています。こちらの資料はそのうちの3つで、商店街・集会所・団地広場となっています。大阪も2つの団地で実施をしており、1つ目は大阪府堺市にある「泉北茶山台二丁団地」になりますが、高層棟横の広場が住民の方にあまり使用していただけていなかったので、広場の中央にサークルラインを引いて円を描いたり、パーゴラを改修したり、MUJI HOUSEさんとURでストリートファニチャーを新たに開発して広場に設置しました。

団地や近隣にお住まいの方に広場に来ていただく・ベンチを使用していただく仕掛けとして定期的にイベントを開催しています。「泉北茶山台二丁団地」は少し変わっていまして、団地の中に土俵があります。かつてはちびっ子相撲などを行っていたようなのですが、今はほとんど使われていませんでした。

今回こちらの土俵へ人工芝を引いて、みんなでゴロゴロできるような空間をつくりました。
資料の写真に煙が写りこんでいますが、すぐ横にかまどベンチを新たに設置したので、もし災害が起きてしまったときはここに集まっていただき、火を起こすことが出来ます。土俵には立派な屋根がついていますので、雨や日差しをしのぐこともできます。

2つ目の団地が、大阪府枚方市にある「中宮第3団地」となります。寝屋川団地と同じ京阪沿線の団地ですが、団地内にこども向けのプールがありました。
昔はお子さまがプールで遊んでいるのを親御さんが見守られていたのですが、少子化や管理の難しさもあり、だんだん使われなくなってしまいました。団地の中心的な場所に設置されているため、プールに人工芝を敷いてちょっとくつろげるような空間を生み出そうと、現在実証実験を行っています。

紹介したような共用部を使うための仕掛けを作る実証実験などを現在MUJI×UR団地まるごとリノベーションで行っています。

松枝
ありがとうございます。先ほどのエピソードの中では、広場や公園があればみんなが集まるということだったのですが、今はイベントなどの活動を通じて地域の方との輪ができています。上原さんから見てこれらの活動の感想や興味を持ったものなどはありましたか?

上原
僕が住んでいた寝屋川団地にスーパーマーケットがあったのですが、今は何もなくなってしまっているので、事例と同じように人工芝を敷くだけで、人が集まってくれるのではないかと思いました。そうなったらとてもいいですよね。

岩田
とてもいいですね。共用部もここは集まっていい・使っていいんだよとこちら示してあげると良いのかもしれませんね。

Part3:これからの団地にあったらいいもの ②上原さんの取り組み

松枝
MUJI×URでも共用部分の取り組みを徐々にスタートして広がっているのですが、上原さんが関わられている取組についても共通するものがありますので、ご紹介させていただきたいと思います。
こちらは岩手県盛岡市にある「きたぎんボールパーク」で、県と市が共同で開発されている新しい野球場です。野球場をただ作るだけではなく、野球の試合がない時にもお子さん含めいろいろな方が集まれることをコンセプトとしています。右側の写真では上原さんが野球教室をやられている様子ですが、上原さんは具体的にこちらではどういった活動をされていらっしゃるんですか?

上原
大きい野球場で野球教室を年1~2回できたらいいなと思っているのと、野球場の外側に公園ぐらいの広さのこども用の小さい遊び場・ボールパークとなっています。今の時代ボール遊びなど禁止されていることが多いので、ここではのびのびと子供たちが打って・投げてと自由にできるようにしています。ボールパークの周りには公園があるので、ご家族で来ていただけるようになっています。

岩田
ボールパークすごいですよね。ここで遊べたらお子さんたちは興奮しますよね。

上原
野球場って公園とはまたちょっと違いますからね。

岩田
そうですよね。こどもの頃にプラスチックバットと柔らかいボールで野球をやっていたので、こんなところで遊べたらすごく嬉しいし、近くにあったらずっとここに行っていただろうなと思いました。

上原
野球に興味がないお子さんももちろんいるので、公園みたいな場所で遊ぶことが出来る、そういうスタジアム・ボールパークとなっています。休みの日とか結構遊びに来ていただいているようなので、こういった施設がもっともっと広がればいいなと思います。

松枝
仮に団地の中で、このままは難しいかもしれませんがこういった施設を取り入れるのは難しいのでしょか?

岩田
なかなか難しいかもしれませんが、その一方で、上原さんがおっしゃってくださった、ボール遊びをのびのびできる場所があるといいなと思っています。

上原
先ほどお話ししましたが、団地内に公園が10個くらいあるので、野球やボール遊びをしてもよい公園をつくるのはありだと思います。
今野球人口が少なくなっていると世の中に言われているのですが、野球人口を少なくしているのは誰なの?という疑問が僕にはあります。
公園でボール遊びをしてはダメ、キャッチボールもダメ、バットでスイングをしたらダメとなったら、野球離れにつながりますよね。
サッカーをしてもいいところはまだ多い方だと思いますが、サッカーボールもダメとなればJリーグを目指す人も少なくなると思うので、こどもたちがボールを使って遊ぶことが出来るような場所があれば、野球をやろう、サッカーをやろうと思う子たちが自然と増えてくるのではないかと思います。

岩田
そうですよね。自分がこどものころは普通にその辺にある空き地でのびのびとボール遊びをしていました。
今は禁止看板が出ていてボール遊びが出来ないところが非常に多くなってしまっています。団地でのボール遊びは禁止にはしてないのですが、「迷惑かつ危険なボール遊びはやめましょう」と看板に書かれています。URが苦労していることをちょっと察していただけるとありがたいのですが、こどもの遊び声でもクレームが出てしまうこともあります。
そういうようなご意見もある一方、こどもをのびのびと遊ばせたいのですが、中・高校生ぐらいのこどもたちが本格的に野球をしてしまうこともあるため、非常に難しい課題となっています。
上原さんにおっしゃっていただいたように、団地の何か所かにボール遊びをしていい場所をつくるのは良いアイディアだと思います。実は東京の調布市にある団地では、公園で遊ぶ人も周りで暮らしている人もみんなお互いさまだよね、というような看板を出していたりします。
最近設置した団地看板なのですが、「暮らす人にも遊ぶ人にも優しくなれる広場」として、ボール遊びをしても良いのですが、ボール遊びをする人は、広場の周りにはみんなが住んでいるからお互いに思いやりながら遊びましょう・使いましょうねとしています。
URの担当者はかなり苦労して考えたと思うのですが、こういった取り組みも行っています。

全面禁止にすることは簡単ですが、実施してしまうと何もできなくなってしまうので、そこは極力、我々もうまく両立していきたいと思っています。

先ほど紹介いただいたボールパークですが、そのまま再現をすることは難しいですが、このような考え方に基づいた遊び場が団地にあるといいなと思いました。

上原
団地にボールパークをそのまま再現することは大きさ的に難しいと思いますが、キッズスタジアムのような場所を展開ができたら面白い気がしますね。

松枝
ありがとうございます。上原さんの団地暮らしのエピソードを中心に団地についてお話ししながら、今行っている取り組みを踏まえ、共用部は野球という視点でもとても必要な要素でもあると僕も感じました。
改めて団地の魅力を再認識することができましたが、MUJI×URの団地リノベーションプロジェクト行うにあたり、上原さんから色々といただいたご意見も今後参考にしていきたいと思います。
特に自然環境と充実した共用部、約束をしなくても誰かがいる環境や階段室を使った壁打ちのエピソード、そして近所の方との付き合いなど全てのお話から団地の良さを感じました。自然とコミュニティが作られていることが魅力だなと改めて認識しました。
それ以上にもっとコミュニティを充実させるために、ボールパークのような考え方も、もしかしたらこれからの団地にも取り入れられるのではないかと感じました。上原さんのお話を受けて、岩田さん、豊田さんから団地をもっと発展できる可能性を感じた所はありましたか?

岩田
そうですね。やっぱり共用部、上原さんが実際に寝屋川団地で暮らしていた頃のエピソードをお聞きすると、住戸を非常に効率よくお住まいいただいていたというのもありますし、共用部をしっかり使っていただいていたことが、プロ野球、メジャーリーガーの上原さんに繋がっていくんだろうなと思いました。
共用部をなかなか使いこなせていない・使いきれてないのかなと思うとこもあるので、その魅力をまだまだ発信していく必要性があることを感じました。

豊田
今日はありがとうございました。私も共用部になってしまうのですが、団地の共用部は自然が豊かなので公園の中に住んでいるような環境だと思いました。共用部が自分の家の庭みたいな形で使えるのはとても魅力的だと思いました。
一方で、みなさんが賃貸住宅を探すときに、駅から何分・部屋の大きさなどで検索をされると思うのですが、共用部の環境の良さなどは検索で引っかからないので、そういったところも今後MUJI×URのプロジェクトでPRをもっとしていけたらいいなと思いました。住戸では、鴨居を外せるプランも今後考えていきたいと思います。

松枝
ありがとうございます。
上原さんも、久々に団地のことを色々思い出していただいたり、MUJI×URの取り組みをちょっと見ていただいて、感じたこととはありましたか?

上原
今日お話しをさせて頂き、自分が団地に住んでいた時は近所付き合いがすごくあったなと思いました。今は時代的に、近所付き合いがあまりないですが、僕は鍵っ子だったので、家の鍵を上の階に住んでいる知り合いの家に預けていたんです。それぐらい信用もしていましたし、そういう付き合いがあったというのが当時の思い出としてあるなと。
今はそういうことする家庭ってないと思うんですけどね。近所付き合いがもうちょっと広まってくれたら、より良くなっていくのではないかなという気はしました。

松枝
ありがとうございます。先ほど紹介しました団地まるごとリノベーションの取り組みもそのきっかけになるのかなとも思いますので、上原さんにいただいたアイディアも今後取り入れていければいいなと思っています。本日はありがとうございました。

上原
ありがとうございました。

MUJI×URのモデルルームも見学頂き、玄関の壁にサインをいただきました。

上原浩治さん、お集まりいただいた皆さま、ありがとうございました。
今後のMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの取り組みにご期待ください。

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