【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「茶山台二丁団地・泉南尾崎団地(前編)」
MUJI×UR団地レポート | 2024.1.29
第二回ゲスト:イラストレーター 山内 庸資さん
12月、冬晴れの暖かい日は、団地をお散歩するにはとても良い時期です。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と、神戸在住の人気イラストレーター山内 庸資さんと大阪南部に位置する2つの団地のお散歩の様子をレポートします。
今回ご紹介する団地情報
・泉北茶山台二丁:大阪堺市 約1200戸の中規模の団地。最寄り駅から徒歩10分ほど。
松本
今回一緒に団地レポートして頂けるのは、現在コラム連載中の「団地から考える暮らしの知恵100」でもお馴染みのイラストレーターの山内 庸資(ようすけ)さんです。
山内
こんにちは。ご無沙汰しています。
松本
いつもお世話になっています。もうかれこれまる4年くらい連載が続いていますよね。第一回の投稿が2020年4月でしたから、今思うとよく続いているなと笑。いつも原稿がギリギリで本当にすみません。そしていつも素敵なかわいいイラストをありがとうございます。
山内
毎月の投稿なので大変な時もありますが、毎度楽しんで描かせて頂いています。
今回も別企画ですが呼んで頂いてありがとうございます。楽しみにしてきました笑。
松本
まずスタートはここからですね。今や茶山台といえばこのピロティ前広場です。つい一年前まで何もない空間でしたが、MUJI×UR団地まるごとリノベーションが始まって少しづつ変化してきました。
山内
具体的にはどのようなことを取り組んでいるのですか?
松本
そうですね、ハードの整備では、ストリートファニチャーを設置して人の滞留を促したり、コミュニティの方では、3ヶ月に1回程度イベントを催して賑わいを作っています。今ではイベントを楽しみにされている居住者の方も増えてきています。今後、地元のクラブ活動などとの関りも増やし、居住者の方がこうした取り組みに参加できるようになったら良いなと思っています。
山内
床面の白いラインは元々あったものでしょうか?
松本
いえ、これもハード整備の一つで、広場の中心を円形のラインで表現することで、広場の中心はここですよ、ということを視覚的に感じ取れるようにしています。床面のインターロッキングを全部改修するような場合、コストもものすごくかかってしまいますが、既存の床面にラインを引くだけでも十分その機能が果たせるという手法でMUJI×URの「こわしすぎず、つくりこみすぎない」というコンセプトに沿ったデザインになっています。
山内
確かにMUJI×URらしい考えですね。
そしてこのストリートファニチャーがまた素敵ですね。天板は天然木材でしょうか?
松本
はい、実はこのストリートファニチャーはMUJI HOUSEとURの共同で開発した商品になっていて、最近は屋外では人工木材が使われることが多いのですが、これは天然木のデッキ材を使用しています。実際に人が触れるところなので天然木の温かみを感じてもらえたらと思い開発したものになります。
山内
素材感の考え方もMUJI×URらしいですね。
松本
では次に集会所の方に行ってみましょう。
山内
この坂道もまた雰囲気がありますね。
松本
UR団地の特徴でもあるのですが、敷地の多くが歩車分離されているので、この坂も車が通ることがない歩行者専用道路になっています。そしてこの坂道の頂上に集会所があります。
山内
高床式の平屋で素敵なデザインの集会所ですね。そしてこの階段がまたカッコいい。
松本
階段に登ってみましょうか。眺めも良さそうですね。
山内
緑が近くにあっていいですね。鳥のさえずりがあちこちから聞こえます。
松本
集会所の壁についているこの住棟サインですが、昨年リニューアルオープンした無印良品グランフロント大阪のMUJI×URのモデルルームの外壁についている住棟サインは、実はここ茶山台二丁団地の集会所のサインを模倣して製作しています。グランフロント大阪では、「M 23」という表記で、MはMUJIのMですが、23は全く意味はなくて笑、この茶山台の「3-23」の番号をそのまま使っています。
山内
そうだったんですね・・!私も昨年リニューアルオープンしてすぐに店舗に伺ったのですが、てっきり2023年完成の「23」かと思ってました。
松本
確かにそうなんですよね。よく言われます笑
それではもう少し団地の奥の方まで行ってみましょうか。実は私も集会所から向こう側(駅から離れている方)には行ったことがなくて、この先はURさんにアテンドしてもらおうと思います。
UR
それでは、引き続きよろしくお願いします。この先にもちょっとした広場があったり公園があったりするので、そこまで行ってみましょう。
山内
はい、是非よろしくお願いします。
こっちの方にも立派な木が育っていたり、紅葉がきれいですね。
松本
あっあれは見たことがあるようなパーゴラがありますね・・!スタートで見たピロティ前広場にあるパーゴラ と全く同じデザインじゃないですか・・もう一つあったんですね。
UR
実はあったんです笑。この薄いブルーの色使いが特徴的ですよね。
松本
もう一年以上この団地に通っているのに、知らないこともあるもんですね。
山内
この街灯もまたレトロで素敵なデザインですね。でも古さを感じない。
松本
この小さな公園にはブランコがありますね。ちょっと乗ってみましょうか。自分が子供の頃の仕様とはだいぶ違いますね。まずチェーンではなくロープなんですね・・!でも確かに触り心地はとてもよく、指を挟まない安心感があります。
山内
チェーンとか冬場は触りたくないですもんね。それにしても大人になってから乗っても楽しいものですね。
UR
この先には特徴的な形の住棟もありますよ。
松本
ポイントハウスですね、茶山台にもあったんですね・・!前回の「団地ちょっとレポート」の中宮第3団地でもご紹介したところでした。
山内
こんな可愛らしい住棟もあるんですね。
UR
3面採光の明るくて風通しの良い住棟になります。そして景観においても横長の住棟が並ぶ中において敷地内のアクセントになるように配置もされています。
山内
なるほど、考えられていますね。
UR
この先には学校があります。その学校の前の住棟の妻側の壁にはカモの親子の様子が描かれています。
松本
またしても前回のデジャブですね。前回の富田団地でも象の親子が描かれていて、虹も描かれていました。今回の絵も物語性がありそうですが、読み解けないですね・・今回も笑。いずれにしても虹が好きなんでしょうね。虹が嫌いな人はそうはいませんからね。
UR
ではこの道を下って、先ほどのスタート時のピロティ前広場まで戻ってみましょうか。
途中、見てもらいたい面白いものもありますので。
山内
それは気になりますね。ぜひ行ってみましょう。
松本
ちなみに私は知っています笑。この団地以外では見たことがないものです・・
山内
余計気になるじゃないですか・・笑
松本
行ってみましょう。
山内
もしかして、見えてきましたが、あれですか?あれはつまり・・土俵?
UR
はいそうです。かつては、巡業や子供相撲なども行われていたと聞いています。現在は実際に相撲を行われてはいません。土俵跡地になっています。
松本
初めて茶山台二丁団地に来た時は、この土俵跡地が一番インパクトがあってここをリノベーションできたら面白いだろうなと感じていました。今でもこの大屋根があることで、雨を凌ぐことができるので、土俵下でマルシェなど開催できてもいいなと思っています。
山内
土俵マルシェ、いいですね。
松本
色々アイデアはありますが、せっかくなので相撲とってみましょうか笑。
山内
外から見たら完全にじゃれあっているおじさん2人ですよね・・汗
松本
相撲なんてもう2度とすることないと思っていましたが、、意外とできますね・・汗
UR
・・・そろそろ、次に行ってみましょうか。
松本
はい、先ほどのスタートのピロティ前広場に戻ってきました。
山内
改めて、ストリートファニチャーを眺めてみると全体がつながって配置されていますね。
この3連ベンチいいですね。まるで縁側のように使えそうです。
こちらのものも、高低差をつけながら連続してつながっているんですね。
松本
まさに、実はこのベンチの名称は「つながるベンチ」と言いまして、座ったり、食べたり、飲んだり、立って話したり、寝転んだりと、高さを変えながらつながることで、人々の様々な行動を満たせるように設計されています。
山内
そういうことなんですね。日常的にこの「広場」と「つながるベンチ」が使われることができればミッション完成!ということですね。
松本
はい、そうですね。イベントの時だけではなく、日常的にこの広場が活用されるように自然と人が滞留してもらえたら一番の成功事例になるでしょうね。
ではこれでちょうど団地を一周して来たので、次の泉南尾崎団地に行ってみましょう。