【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「アルビス五月ヶ丘」
MUJI×UR団地レポート | 2024.10.16
第三回ゲスト:UMA design/farm代表 原田 祐馬さん
2月の冬晴れの日、3回目のお散歩レポートもとても良い天気に恵まれました。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と、大阪を拠点に活動されているUMA design/farm代表の原田祐馬さんで、大阪北部と大阪湾に位置する団地のお散歩の様子をレポートします。
写真左から、MUJI HOUSE 松本、ゲストのUMA design/farm代表の原田 祐馬さん。
今回ご紹介する団地情報
・アルビス五月ヶ丘:大阪府池田市 約870戸の団地。最寄り駅からバス7分と、徒歩2~7分ほど。
松本
今回一緒に団地レポートして頂けるのは、私と同年代で憧れのデザイナーUMAdesign/farm代表の原田祐馬さんです。
原田
こんにちは。はじめまして。
松本
実は、原田さんが手掛けられた、香里ヶ丘西団地の色彩計画を拝見して以来、ずっと原田さんにお会いしたいと思っていたのですが、共通の友人はいれどもお会いする機会がありませんでした。今回このようにお会いすることができて感動です笑。今日はぜひ気軽に楽しんでもらえたら嬉しいです。
原田
こちらこそ、今日は楽しみにして来ましたので、どうぞよろしくお願いします。
松本
原田さんは、これまでもたくさん団地の色彩計画を手掛けてこられましたが、団地との出会いはどんなことだったんですか?
原田
実は私自身、大阪府吹田市にある団地出身で、そういう意味では団地には思い入れがあります。こうやって団地の仕事に関わっているのはやっぱり縁があるんでしょうね。
松本
そうだったんですね。私も大阪出身ですが小さい頃は団地とはあまり関わりがなく、大人になってから団地に住んでハマりました笑。そこから団地に関わる仕事がしたいと思ってMUJI HOUSEに入り、今実際に、団地をリノベーションする仕事に関われて本当に楽しいですね。
原田
私も元々建築畑出身ですが、今ではアートディレクターとしてジャンルを問わずデザインを行なっていて、何デザイナーかと言われたらただのデザイナーと答えています笑。
松本
UMAさんのお仕事は本当に多岐に渡っていますよね。今日はそんな原田さんの視点でぜひお散歩しながら団地のお話をお聞きできたらと思います。
まずは、大阪府池田市にある「アルビス五月ヶ丘」からスタートしたいと思いますが、団地自体が丘陵地にあって、中心地がどの辺りかが把握しにくいので、どこからスタートするか作戦会議ですね。
UR
ここがちょうど、集会所の前なのでここからスタートしましょうか。
原田
ここにある地図の中心の赤い部分ですね。こうしてみると学校もたくさんありますね。
UR
ちなみに、アルビス五月ヶ丘は、2000年前後に建て替えられた団地で、今では全棟にエレベーターがついており、生活するにはとても便利な団地となっています。
松本
まずは集会所からですが、建て替え団地だけあってモダンな建築の集会所ですね。
丘陵地のため、1階は半地下で管理サービス事務所と小集会室、2階に大集会室になっているので、眺めも良さそうですね。
原田
集会所の前に何かモニュメントがありますね。「日本住宅公団」と書いているので、建設当初のものを建て替え後もしっかり保存しているんですね。
松本
早速出ましたね。こういう団地の遺跡というか、かつてのものを大事にしているのがいいですね。
松本
集会所の1階の小集会室ものぞいてみましょう。
原田
このポスター気になりますね。「フラワー」というのはコミュニティ・カフェでしょうか。自治会も盛んに活動されているんですね。
松本
今度は2階の大集会室も行ってみましょうか。一旦外に出て外階段で上がる感じですね。
原田
集会所の外階段前には宅配BOXがありますね。最近では団地に置かれることも多いんですかね。
松本
私もあまり他の団地で見たことはないですが、こういうものが集会所にあることで、きっと集会所に来るきっかけにはなりそうですよね。エレベーターがない団地だとむしろ5階まで持ってきてもらう方が楽ですが、この団地では全棟エレベーターがありますし。
UR
それでは2階に行ってみましょう。屋上に上がることもできますよ。
松本
原田さん!2階の和室にすごいものがありますよ。「昭和35年当時」と書いてあるので、建設当初のものでしょうね。まさに中層階段室型の住棟が並んでいて圧巻です。
原田
これはいいですね。貴重な写真なんじゃないでしょうか。
松本
当時はドローンとかないですものね笑。
では大集会所に行ってみましょうか。
松本
おーーこの集会所はすごいですね。過去一きれいです・・!
原田
なんか、教会みたいですね笑。
松本
このまま屋上に行ってみましょう。
松本
屋上からようやく団地の全体像が見えてきました。建て替え団地だけあって本当にきれいな団地です。あと、MUJI×URも2016年から導入されているので、原田さんにもぜひ見ていただきたいと思います。
原田
実物のMUJI×URを見るのは初めてなので、楽しみです。
UR
ここからもう少し下った所の住棟に、工事が完了したMUJI×URの住戸があります。
松本
ではでは行ってみましょう。
松本
これはなんでしょう・・途中の看板に「古墳」の紹介がありますね。行ってみましょうか。
原田
これは確かに古墳ですね。上まで登ると相当いい眺めなんじゃないですか・・?
松本
本当にいい眺めですね・・!
原田
スーパーの看板があるあたりがきっと池田駅じゃないですかね。北大阪が一望できます。
原田
今気づいたんですが、反対側を眺めると団地の住棟が並んでいますが、山の稜線と住棟の
高低差が見事に調和していますね。
松本
確かにそうですね。元々あった起伏をそのまま生かして住棟を建てているからこそ、同調されているんでしょうね。人工的に平らに造成してしまうと、こうはならないですからね。
UR
今度は今見えている住棟の最上階からの景色を見に行ってみませんか?
松本
なるほど、今度はあっちからこっちを見てみるわけですね。ぜひ行ってみましょう。
原田
ここからはさっきの古墳がよく見えますねー、まさに古墳ビューですね笑
原田
右には伊丹空港も近いから飛行機の離着陸がバッチリ見えますね。左の高層の建物は吹田駅前の高層マンション群ですね。ハルカスは・・・ここからは少し遠いですが、正面の奥の方に見えるのがそれっぽいですね。
松本
池田の丘陵地ならではの眺めですね。前回の泉南尾崎団地も関空が近くて飛行機がよく見えましたが、今回は伊丹空港がこんなに近くに見えるんですね。
それにしても本当にこのお散歩企画はいつも天気がいい笑。
松本
ちょっと寄り道が長くなりましたが笑、MUJI×URの住戸に行ってみましょうか。
実はここアルビス五月ヶ丘のMUJI×URは、通常のMUJI×URとは違う、変わった仕様になっているんです。通常は、築50年近い高経年団地の住戸をリノベーションすることが多いのですが、アルビスのように平成に建てられた団地は内装も現代に近い仕様になっているので、ある意味古い団地と違い「味」や「ビンテージ感」になる部分が少ないので、逆に苦労してリノベーションをしています。
原田
新しい方がリノベーションに苦労するというのは面白いですね、嬉しい悲鳴というか・・
では、私が初めて見る住戸は特殊な方というわけですね笑。
松本
そうなりますね。
松本
こちらになります。すごく久しぶりにきました笑。5年ぶりくらい?ですかね。
まず特徴的なのが、このオリジナルの「持出しキッチン」の高さに合わせて塗り分けた塗装になります。平成に建てられたような比較的新しい団地の場合、壁紙もきれいな状態なことが多く、これを全部剥がして塗装する事は非常にもったいないですし、手間もかかってしまいます。そこで既存の壁紙の上から塗装を行ったのですが、ただ塗っただけでは、きれいな白い壁紙のようになってしまうので、あえて塗り分けを行うことで、しっかり塗装であることが居住者にもわかるようにしています。
原田
建具や手すり、タイルにコンセントプレートまで塗り分けされていますね。
松本
はい、徹底することでノイズのない空間に仕上がります。
原田
この畳も変わってますね。色も特徴的です。素材は何でしょう?
松本
はい、麻でできた「麻畳」と言います。これは通常のMUJI×URでも常に使われているもので和室を洋室化するのではなく、和室のまま洋室のように使える畳として開発されました。このままソファーやテーブル、ベッドを置いて使用することができます。
原田
これはいいですね。思ったより柔らかさもありますね。
松本
こちらの押入にあるのが、「ダンボールふすま ・らんま」です。
松本
この「ダンボールふすま」ですが、元々団地のふすまにはダンボールを芯材使用しているものがあるのですが、そのふすま紙を貼らずにダンボールの素材感をそのまま生かして商品化したものになります。ダンボールなので、とても軽くてふすまを外したり付けたりすることができ、簡単に間取りを変えていけるのは、団地の良さだと思っています。
原田
「持出しキッチン」も「麻畳」も「ダンボールふすま」もURさんと共同で開発したオリジナル商品なんですね。
松本
そうなんです。プランニングと同じくらいパーツ開発が大事で、なるべく既製品を使わないことでオリジナリティが生まれてくるのだと思います。アルビス五月ヶ丘のプランの場合は、塗装の塗り分けが一番のポイントですけどね。
原田
MUJI×URのお部屋は真っ白なイメージがあったので、こんな風にバイカラーで塗装されたお部屋もあるのは驚きました。塗装へのこだわりは、外壁の色彩計画においてもとても大事なことなので、通ずるものがありますね。
松本
確かにそうですね。原田さんが手掛けられている団地はどれも可愛らしくてセンスがいい色分けがされていますよね。次のお散歩団地である「南港シリーズ」の3団地(しらなみ・わかぎの・ひかりの)は逆に今度は私が初めて拝見するので、すごく楽しみにしています。
それでは、行ってみましょう。