あかりについて・前編
寄稿・インタビュー | 2008.11.21
住まいを彩る「あかり」について、パナソニック電工株式会社インテリア照明事業部のライティングコーディネーター墨 貞宏氏、東京Archi LABデザイン担当の田中晴美氏のお二人にお話を伺いました。
普段の暮らしの中であかりを意識することはどのくらいあるでしょうか。意外と知らないあかりについて、今回は皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
あなたはどんなあかりの中でどのように暮らしていますか。
「家の中のあかりは意外と意識されないものです。そこでまずは自分がどんなあかりの中で暮らしているのかを知ることから始めるといいのです。」墨氏はこう話し出しました。
あらためて家の中のあかりを見回してください。どんな照明器具がついているでしょうか。
天井の照明器具はどんなものでしょうか、それは蛍光灯でしょうか。
白熱灯でしょうか。
またその他、ダウンライトがあるでしょうか。
または壁を照らすスポットライトがあるでしょうか。
そして家のあかりはあなたにとって居心地のいいあかりでしょうか。もし、家よりもっと心地よいと感じるあかりの空間があるとすれば、それはどこでしょうか。ホテルのラウンジでしょうか。よく行くカフェでしょうか。レストランでしょうか。
あかりについて考える第一歩は、自分にとって心地よいあかりとはどんなあかりなのかを意識することから始まるのだそうです。
あかりをつくるとは影をつくること
また、田中氏は次のようにいいます。「あかりを計画することは陰影をつくること。どれだけいい影をつくれるのか、とも言えます。」
あかりの計画には、「均質配置」と「目的配置」とがあるそうです。
「均質配置」とは部屋全体を均一に明るくする照明計画です。
一方「目的配置」とは、複数個の照明を配置して目的に応じた照明器具を選び、明るさに抑揚をつけていい影を作る照明計画です。
戦後の日本には前者の均質配置が多く、均質な明るさを求めてきましたが、後者の”いい影つくり”をもう一度見直してはいかがでしょうか。
暗闇の中から考える
田中氏は続けてこう話されました。「月の光は結構明るいものです。暗闇に慣れると、弱い月の光でも明るく感じてくるものです。あかりを考えるとき、まずは暗闇から光を足していきながら欲しい光を探していくのがいいのです。」
このアドバイスをもとに、実際に今お住まいの家の中で実験してみるのはいかがでしょうか。まずは暗闇にして、ロウソクの光をいろいろなところに置いていきましょう。高い位置、低い位置、自分のそば、自分から遠いところ、廊下の角など、効果的な場所を探してみてください。
欲しい光の場所や位置に応じて、1本ずつロウソクを増やしていくとその効果がわかりやすいそうです。暗闇にロウソク1本だけの光は、まぶしいと感じるらしく意識が集中してしまいリラックスできないようですが、2本以上あればそのまぶしさが軽減され、リラックスできるようです。
また、あかりには重心があり、あかりの重心とはどこにあかりがたまっているかということだそうです。あかりの重心はなるべく低くするほうが落ち着くので、自分が気持ちいいと感じるあかりの高さを見つけてみてください。
※キャンドルは火を灯して楽しむものですが場合によっては火災や火傷といった事故の原因にもなりますので、火のお取り扱いには十分にご注意ください。
あかりの計画をする時の大切な6つのキーワード
(1) あかりだまりをつくる
リビングテーブルやダイニングテーブルの上に光を集め、火を囲むあかりの原風景のように、人が集いたくなるような空間の中心感をつくります。
(2) 視線の先を明るくする
視線の先の壁面などを明るくし、床面照度ではなく鉛直面の照度をあげることで実際の照明以上の明るさ感が得られます。物理的な「明るさ」だけでなく感覚的な「明るさ感」も重視します。
(3) あかりの重心を下げる
低い位置にあかりを置き、あかりの重心を下げれば、空間に落ち着き感やくつろぎ感が出ます。また高い位置のあかりと組み合わせ、高低差をつけることで、空間の立体感を引き出すこともできます。
(4) 陰影をつける
物体は陰影があって初めて立体として見えてきます。
あえて明暗をつけることで空間に広がりや奥行きを感じることができるようになります。
(5) 床、壁、天井で光を受ける
光はそれぞれ受ける「面」があってこそ明るさとして目に見えてきます。建築設計の中で特に大切にしたい床、壁、天井という「面」。これらのあかりを受ける反射板とすることで、空間の開放感を強調することができます。
(6) あかりを中心からずらす
ダウンライトを廊下の片側に寄せることで天井が広く高く見え、同時にグレア(光源がみえてまぶしく感じること)が軽減されます。建築において重要な天井という「面」を美しく見せる効果もあります。
パナソニックカタログ「Home Archi」P176より