「団地の照明」から考える暮らしの知恵

団地から考える暮らしの知恵100 | 2022.10.18

第三十回
「団地の照明」から考える暮らしの知恵

団地に限らず賃貸住宅の場合、居室の照明は住む人が用意することが多いのではないでしょうか。もちろん、トイレやお風呂、キッチンなどの水まわりは住み始めから照明器具が付いていることが多いですが、なぜ居室には初めから照明器具が付いてないのでしょうか。

逆に考えると、照明器具だけが唯一、住宅設備のなかで住む人が「自分で選んで付けることができるもの」ともいえます。照明は個性を出したり自分好みのインテリアをコーディネートするアイテムとして、とても重要な要素となっています。

一方、省エネ化の進んだ現代の暮らしにおける照明器具はLEDが主流となり、価格も数年前に比べると随分と入手しやすい価格になってきました。LED以前の電球は消耗品でしたので、数ヶ月や数年以内には交換ということが必要でしたが、最近は滅多に交換をすることもなくなりました。小さいお子さんなどは、電球を交換した経験がない子もたくさんいるのではないでしょうか。

<暮らしの知恵(1) これまでの団地の照明 – 引きヒモから、壁スイッチへ ->

左:建設当初は、引きヒモスイッチ型の照明器具を想定し、壁にスイッチがない
右:改修後の部屋の場合、露出配線で壁にスイッチを追加することが多い

そもそも、団地の建設当初(40~50年前)の居室は和室が多く、照明のスイッチは「引きヒモスイッチ型」の照明器具を想定しており、ヒモを引いて照明をつけたり消したりしていました。なので、居室の壁にはスイッチがなく、台所や水わまりのごく一部にのみ壁にスイッチが付いていました。

それが、時代と共に和室の居室にも壁にスイッチが取り付けられるようになり、コンクリートの天井、壁でできた団地の住棟では、その電気配線はほとんどが露出するかたちで改装されることとなります。

じつはこの電気配線が、部屋のなかで目立ってくることで、インテリアにおいてはあまり好ましくない、雑音(ノイズ)のような存在となってしまうことも多いのです。

しかし、最近ではLEDの普及により、壁のスイッチではなく「リモコン」で操作する照明器具も増えてきました。自分好みの明るさや、色温度も変化させることができます。そしてリモコンの存在は、一周まわって「壁のスイッチ」が必要ない、つまり団地の建設当初に近い状況となってきました。

<暮らしの知恵(2) あったらいいな – 外せるペンダント照明(引きヒモ付き) ->

左:住みはじめから照明器具はついている、操作は基本リモコンで行う。 また取り外しが可能
右:取り外した照明は、フロアーライトとして利用でき、残った充電コードも引きヒモスイッチとして利用できる

壁にスイッチが要らなくなると、露出された電気配線も不要となり、インテリアの雑音(ノイズ)を取り除いていくことができます。そうなると、よりシンプルな「暮らしの背景となるような照明器具」を入居前から付けておくことも可能なのではないでしょうか。

そこでシンプルに直径30cmほどの「ボール球のペンダント照明」を住み始めから居室に用意しておくのはどうでしょうか? もちろん、壁にスイッチは必要ないです。

そしてそのボール球は取り外しができ、フロアーライトとしても機能できれば、さまざまな暮らしの状況に応じて、照明を適切な位置に移動させることができます。そして残った配線コードは、「充電用ケーブル」兼、「引きヒモ」スイッチとしても機能することができます。

消費電力の少ないLEDが取り外し可能な照明器具を実現し、かつてあった「引きヒモスイッチ型」の懐かしい機能を融合させた照明器具は、部屋の壁に「スイッチ」も「リモコン」もない、まさに時代が一周まわって建設当初に戻ってきたような感じです。

左:昭和40年代の団地のトイレの「引きヒモスイッチ型」
右:このヒモを引くとトイレの電気がつく

このような「暮らしの背景となるような移動式照明器具」を自在に扱うことができるようになったら、普段のライフスタイルも大きく変化しそうです。

いかがでしょうか?
このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見をお待ちしております。