「団地のコンセントの位置」から考える暮らしの知恵
団地から考える暮らしの知恵100 | 2022.4.19
第二十五回
「団地のコンセントの位置」から考える暮らしの知恵
現代の暮らしにおいて、コンセントは非常に重要な「暮らしの必需品」になっています。コロナ禍を経て自宅に限らず、どこでも仕事ができるようになりましたが、たとえばカフェを見渡すと電源を求めて、どこのお店も電源がある席から埋まっていきます。
住宅においても、コンセントが欲しいところにあるかないかで、その暮らしの快適さが変わります。ライフスタイルの変化に応じて、住宅のコンセントの位置も変わってきます。ですので長く快適に暮らしていくには、リフォームをするたびに、コンセントの位置は見直す必要があります。
団地の場合、壁のほとんどがコンクリートなので、新たにコンセントを設置するには、全て露出配線となり、コンセント自体もBOXが露出して見えてしまいます。このように、コンクリートの壁は、コンセントの位置(高さ)を変えることを難しくしていますが、これを違和感なくスッキリ見せることができれば、リノベーションによって現代の暮らしに合うように、コンセントの位置を積極的に変えていけるのではないでしょうか。
<暮らしの知恵(1) ちょっとした工夫 – コンセントの最適な高さを考える ->
一般的なコンセントの設置高さ。家電の大型化や、高齢者の使いやすさに対応して、高さが変化してきている
最初に誰もがイメージする一般的なコンセントの位置は、足もとにあるコンセントではないでしょうか。その足もとコンセントの位置さえも、最近では高さが変わってきています。古い団地の場合、「床座」を想定しているので、足もとコンセントも床から20cmほどの高さにありましたが、現代の住宅では、「椅子座」の生活が一般的であり、また高齢者の使い勝手も考慮され、10cmほど高い、床から30cmの位置が標準的になってきています。
また、洗濯機や冷蔵庫も、ドラム式洗濯機や、高さ1.8mを超える大型冷蔵庫などの登場により、コンセントの位置もそれぞれ10~15cmほど高くなってきています。
団地の建設当初は想定されていなかった、電子レンジやエアコンといった大容量の家電用のコンセントも、分電盤から専用回路を新たに引き直してコンセントが増設されています。
このように、ライフスタイルが変化するたびにコンセントの位置は変更され、増設されてきました。それに加え、さらに電話線、テレビアンテナ線も追加され、団地の住宅の壁は、網の目のように配線が目立ってしまう状態になっていることが多いのです。
<暮らしの知恵(2) あったらいいな空想レベル – どこでもコンセント/スイッチ ->
スイッチ・コンセントBOXをつなぐ配線モールが一体となった「どこでもスイッチ・コンセントモール」
それでは、この露出配線によって配線だらけになってしまった壁をスッキリ見せる方法はないものでしょうか。それには「配線のルール」を設定することが必要となりそうです。まず、天井と壁の間にある「回縁(まわりぶち)」と、床と壁の間にある「巾木(はばき)」のなかを配線できるようなモールがあれば、それを床から天井までつなぐことで、「どこでもコンセント/スイッチ」とすることがきないでしょうか。
外観の厚みが1.5cm、幅が3cmほどあれば、なかに電気配線をすることができ、また、団地でよく見られる部材(鴨居や敷居、長押、隅柱)とも相性がよく納まりそうです。
同じような方法で、電話線、テレビアンテナ線も納めることができそうです。
また、MUJI×URの住まいでは、この露出配線に対して、丁寧に設計を行ってきました。以下の写真は、MUJI×URで行っている標準的な配線方法になります。キッチンまわりや玄関、窓まわりはとくに配線が多くなります。
MUJI×URの住まいの配線ルールは、
・横引きは、木製配線カバー・・・木製で壁と同じように白く塗って空間に馴染ませる
・縦立ち下げは、PF管・・・一般的な電気工事で使われる部材。壁アクセントに
このように、部屋全体の配線にルールをつくることで煩雑になりがちな配線をスッキリまとめることができます。壁にコンセントやスイッチが埋まっているより、露出配線のほうがオシャレ?(笑)になれば、団地の暮らしも楽しくなりそうです。
いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見お待ちしております。