「団地のトイレ」から考える暮らしの知恵
団地から考える暮らしの知恵100 | 2022.2.22
第二十三回
「団地のトイレ」から考える暮らしの知恵
団地の水まわりは、ミニマムなつくりになっています。
40㎡程度の住戸の場合、限られた空間のなかで、浴室、洗面、洗濯置き場、トイレとひしめき合って配置されています。とくにトイレは、用を足す以外には日常の生活のなかであまり快適に過ごせる空間としては設計されていないことが多く、排水管も剥き出しで、狭小のトイレの場合、タンクも隅付きタイプになっていることもあります(事例1参照)。
また、換気扇がない場合は、必ず窓がついているので、狭くても暗いことはなく、気持ちの良い自然光が入ってくるのは魅力の一つといえます。トイレの建具にもガラスの窓がついて、玄関側の洗面や洗濯機置き場まで明るい自然光を届けるような、そんな設計になっていることが多いのです。
このような、魅力的な部分をトイレだけに留めず、水まわり全体として魅力UPに繋げられるようなアイデアを考えてみたいと思います。
<図1>の間取りは、団地の代表的なミニマムな水まわりの例になります。
玄関側から順に、洗濯機置き場、洗面そして突き当たりにトイレがあります。
お風呂に入るときは、脱衣室がないので、カーテンで仕切れるようになっています。
それを<図2>のようにまず、トイレを仕切っている壁を撤去してしまい、水まわりをつなげて全体を引戸で仕切り、明るくて広い洗面脱衣室としました。心地よく過ごしやすくなったトイレの便座の前に折畳みデスクがあれば、テレワークもできそうです。
<暮らしの知恵(1) ちょっとした工夫 – 排水管を利用したペーパーストック ->
そんな心地よく過ごせるようになったトイレ空間ですが、トイレの壁を撤去したために、壁沿いにあった「トイレの排水縦管」や「洗面の排水縦管」が並んで目立って見えてきます。そこで、ほぼ同じ直径の「トイレットペーパー」も一緒に並べてストックすることで、まるで必然的に並んでいるように見せることができないでしょうか。
ほぼ同じ直径になっているのは偶然ですが(笑)、排水縦管と同じ直径のエンビ管をホームセンターなどで購入し、DIYで縦にカットしたものを立てて、そのなかにストックすればトイレットペーパーが崩れる心配もありません。
<暮らしの知恵(2) あったらいいな空想レベル – タンクレス風のトイレ ->
トイレの間仕切り壁を撤去して移動することで、広いユーティリティスペースになる
トイレの壁を撤去して目立つのは、排水縦管以外にもう一つ、トイレのタンクがあります。最近のオシャレなマンションなどでは、タンクレスのトイレを設置して広い洗面スペースと一体にすることもありますが、膨大な数を管理している賃貸住宅の団地の場合、そのすべてをタンクレスのトイレに交換することはまだまだ現実的ではありません。また、スペース的な理由でいわゆる「隅付きタンク」のトイレもたくさんあります。
そこで、タンクのみ壁(板)で隠すことはできないでしょうか。そうすることで、逆に便器だけが置かれているようなかたちとなり、まるでタンクレストイレのように見せることができそうです。
MUJI×URでは、これまで住戸のトイレ空間についてもリノベーションを行っています。Plan27(新多聞団地)では、狭小のトイレを解消するために壁を撤去して、洗面スペースと一体化し、広いユーティリティスペースを確保しています。
またPlan64(志徳団地)では、もともとトイレの正面にあった収納の壁を撤去し、収納部分にワークデスクを設置して、トイレのなかでもテレワークができるようにリノベーションを行っています。
このように団地のトイレには、まだまだリノベーションの可能性がありそうです。お家で過ごす時間が長くなった昨今では、用を足すだけではない空間にしたいですね。
いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見もお待ちしております。