「団地の玄関ドア」から考える暮らしの知恵

団地から考える暮らしの知恵100 | 2021.11.23

第二十回
「団地の玄関ドア」から考える暮らしの知恵

団地の玄関ドアの特長は、なんといってもスチールのプレスドアです。このプレスドアは建設当初から変わらない部分の一つで、プレスして凸凹にすることで、1枚のスチール板の面強度を高めているものになり、団地の普及とともに数多く生産されました。

もともとはドアにのぞき窓がついて、カーテンもつけられるように!(笑)なっていたりしました。近年ではそののぞき窓を改修してスコープをつけたり、ドアノブも握り玉からレバーハンドルに変更し、ドアチェーンをドアガードに変更したりなど、改修を積み重ねてきていますが、スチール工業製品のかっこよさを残すプレスドアは、いまも健在です。

そのスチールプレスドアの課題の一つは、断熱性能ではないでしょうか。とくにこれから寒くなってくると、玄関からの冷気を何とか解消したいと思うことは多いでしょう。

解決策として、玄関ドアの手前にもう一つ建具をつけて、玄関からの冷気を抑えるという方法もあります。写真の事例では、玄関ドアの前に引戸を付けて、玄関ドアを隠すと同時に、冬期の寒さ対策を兼ねています。

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MUJI×UR Plan60(香里団地)

しかし、通常の団地の場合、玄関周辺に新たに引戸をつけるほどの空間的な余裕がない場合も多いので、逆に積極的に玄関ドアを見せながら、断熱性能を高め、プラス暮らしが豊かになるアイデアを考えてみたいと思います。

<暮らしの知恵(1) これまで実績のある方法の紹介 – プレスドア断熱化工法 ->

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室内側からプレスドアに直接、断熱パネルを張ることで断熱を行う工法

既存の玄関ドアを生かしながら断熱を行う方法として、「プレスドア断熱化工法」があります。室内側からプレスドアに直接、断熱パネルを設置することで断熱を行うので、ドアごと交換する工事に比べて入居者への負担は少なくてすみます。

<暮らしの知恵(2) ちょっとした工夫 – 玄関ドアに取り付けるテンプレート ->

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玄関ドアに取り付ける断熱パネルのテンプレート。断熱性能と収納を兼ねる

先ほどご紹介した「プレスドア断熱工法」ですが、もともとあったプレスドアのかっこよさは見えなくなってしまいます。綺麗に真っ平な玄関ドアに生まれ変わるので、それもよいことですが、そこに少しだけアイデアを加えてみたいと思います。

たとえば、玄関まわりには、外出する際に必要な物でたくさんの溢れています。傘、腕時計、財布、ICカード、家・車・自転車の鍵、靴べらにブラシと、最近では、マスクやエコバッグも忘れないようにしないといけません。そこでこれらを一同に見て確認できるように、玄関ドアに取り付けたウレタン素材の断熱材を、それぞれはめ込むことができるように切り欠き、綺麗に収納してみては如何でしょうか。

イメージは、文房具を綺麗に並べて収納できる「かたづけマス」のような壁です。

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文房具の「かたづけマス」をイメージ。ウレタン素材が断熱材も兼ねる

せっかく、玄関ドアに断熱材を取り付けるのであれば、それを利用してみても良いのではないでしょうか。板状のウレタン素材は、断熱性があり、形状も自由に切り欠けるので、一石二鳥でちょうど良さそうです。

このように一同に見渡せれば忘れ物も減りますし、足りない物にもすぐに気付きますが、あまり切り欠き過ぎると、断熱性能が落ちてしまうので(笑)、注意してくださいね。

いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見をお待ちしております。