「団地の1階の窓」から考える暮らしの知恵
団地から考える暮らしの知恵100 | 2021.10.26
第十九回
「団地の1階の窓」から考える暮らしの知恵
通常のアパートやマンションの場合、1階は上階に比べ日当たりが悪く暗い印象があり、1階を好む人はあまりいません。エレベーターがあれば当然、眺望が良く、防犯性も高い上階のほうが好まれる傾向にあります。
中層階段室型の5階建の団地の場合、エレベーターがないので当然、下階の住戸に人気が集中します。それに加えて団地の場合、住棟間隔が広いことも多く、1階であっても日当たりの良さが期待できるので、1階に住むことをためらう理由はほとんどありません。なので、もともと上階に住んでいた住民の方が、高齢になり1階に移り住むことも珍しくはありません。
唯一気になるのは、窓からの「目線」ではないでしょうか。歩行者の目線が気になるのは1階なので仕方がありませんが、逆に目に留まるということは、住民との関わりやコミュニティを生むきっかけづくりには、1階のグランドレベルが最適になります。そして「団地の1階の窓」には、さまざまな可能性を秘めています。そんな「団地の1階の窓」を利用した暮らし方や、「生きがい」を感じながら住みこなせる暮らしの知恵を妄想してみたいと思います。
<暮らしの知恵(1) あったらいいな① – 高齢者の「生きがい」になる小商い ->
1階の窓を利用した小商い。夏は「かき氷」、冬は「おでん」など1階に住みながら商売をする
上階から1階に移り住んだ高齢者の方にとっては、ただ住んでいるだけではなく、「生きがい」になるような1階の使い方はないものでしょうか。例えば居室の窓を使ってちょっとした小商いができるかもしれません。夏は「かき氷」、冬は「おでん」といったテイクアウトのみの簡単な飲食店を商うのはどうでしょうか。どちらも学校帰りの子供たちの人気になりそうです。1階の窓を介して、世代間コミュニティを生みだすきっかけとなりそうです。
そして1階の場合、住棟間の広大な敷地を利用して「野菜づくり」ができるかもしれません。つくった野菜は、自宅で調理をして振る舞うことで、まさに「地産地消」を団地の1階で行うことができるかもしれません。
<暮らしの知恵(2) あったらいいな② – 土日限定の「副業」コーヒースタンド ->
1階の窓を利用した小商い。サラリーマンが副業で土日限定のコーヒースタンドをする
1階に住むのは高齢者だけとは限りません。もし若年層の方が1階に住むのであれば、「副業」としてさまざまな1階の使い方が考えられます。例えば、コーヒーが趣味の人であれば、土日だけ限定のコーヒースタンドができそうです。ほかにも、パンや焼き菓子なども扱えそうです。また飲食に限らず、革細工やアクセサリーなどの雑貨品を扱うちょっとした小商いもできそうです。さらに、ふすまを使えば小商いスペースとプライベートスペースをうまく分けることができそうです。
小商いを行わない場合でも、子育て世代にとっては1階の場合、子供が遊びまわっても下階に迷惑がかからないので、より安心して子育てができそうですし、ベビーカーの出し入れにしても便利です。
この「団地の1階の窓」を介した小商いは、基本的には住戸内でお店を営業することは禁止になっているので、すぐに実現することは難しいのですが、小商いを通して団地住民のコミュニティが活性化するのであれば、「団地の1階の窓」を介した小商いもあなどれないものになりそうです。おそらく、団地のグランドレベルの風景は一新されることになるのではないでしょうか。
また、MUJI×URでは、窓に対して木枠を延ばしてカウンターにしたプランもあります。
これは、ベンチとして使用できたり、床座においてデスクとして使用もできますが、もし仮に1階で小商いができるようになった際には、接客するのにちょうど良い高さのカウンターになりそうです。
また、1階の場合、バルコニーのある南側を開放して小商いができるスペースをつくることもできそうです。MUJI×URでは、もともとバルコニーアクセスが可能な1階バルコニーを延長してウッドデッキの広いテラスをつくり、もともとあった手すりをカウンターとしたプランもあります。実際にはお店として営業はできませんが、バーカウンターのように使用できれば、団地の屋外でお酒や食事が楽しめそうです。
いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見をお待ちしております。