「引越し」から考える暮らしの知恵

コラム | 2021.3.30

第十二回
「引越し」から考える暮らしの知恵

3月になりました。団地では、お引越しの最盛期です。団地を出て行く人、団地に新しく住む人。団地を舞台に、さまざまな人々が行き交っています。その行いが団地ができて半世紀もの間続けられ、住みつながれてきました。

賃貸物件において、住みつないでいくという意識を持っている人はそこまで多くはないと思いますが、UR団地の場合、空き家になる度に丁寧に修繕を繰り返しながら、次の入居者のために準備を整える感じが「住みつないでいく」という感覚を生んでいるのかもしれません。それはまさに、団地という住空間、供用部、緑豊かな敷地、それらすべてをみんなでシェアしているという感覚そのものです。

そして、団地の引越しは一大イベントです。何せ団地で最も一般的な中層階段室型といわれる5階建の住棟の場合、エレベーターがない!のですから大変です笑。そして狭い階段室を通って、大きい家具や家電を搬入したい場合は、事前に引越し業者の方へその旨連絡を入れておくことも引っ越しのポイントになります。

<暮らしの知恵(1) あったらいいな空想レベル – 5階でも楽々引越し ->

では団地において、理想の引越しとはどういうものでしょうか。業者の方に狭い階段室を何度も行ったり来たりしてもらうのも申し訳ないですし、持ち込めるものが限定されるのも不満が残ります。それならば逆に、積み込むトラックの荷台の方が5階までぐんぐん伸びて迎え入れてくれるとしたらどうでしょうか。

階段室を介さずに運び込むことができれば、持ち込みたいもののサイズも限定されずに、窓から搬入することもできます。また同じ階段室の近隣住民に迷惑をかけることもなく済みそうです。

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引越しのトラックの荷台の方から迎えに来てくれる

最近では、中層階段室型の住棟の階段室ごとに一台ずつエレベーターを増設する工事を行うこともあります。日常的に使用することができるようになれば、高齢者の住民に対しても、とても便利になることが想像できます。

しかし、すべての住棟にエレベーターを増設するのは、莫大なコストがかかりそうです。むしろ、このようなトラックを団地につき1台開発した方が、コストも抑えることができのではないでしょうか。引越しやお葬式のように必要なときにだけ使用できる、移動式エレベーターのようなものもよいかもしれません。

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中層階段室型住棟の階段室毎に増設されたエレベーター(志徳団地)
高齢者の多い団地では日常的に便利になる

<暮らしの知恵(2) ちょっとした工夫 – 限られた広さを意識する ->

団地の引越しにおいて、エレベーターはとても重要な要素ではありますが、初めからエレベーターがないことがわかっていれば、いずれ引越しをするときのことも考えてものを購入する、ということも大事ではないでしょうか。

そもそも賃貸に住む最大のメリットは、身軽であるということです。いつでも好きな場所へ移り住むことができるので、普段からあまりものを増やさず、ミニマリストを意識してものを揃えることも生活の知恵の一つといえます。そして団地住戸の限られた広さの中でいかに快適に過ごすかを常に意識することで、ものを増やしすぎないという癖がついてくると思います。

本当に大きな冷蔵庫が必要かどうか、すぐ近くにコンビニがあれば、実は小さい冷蔵庫でよいことに気づくこともあります。本当に大きいベッドが必要かどうか、実は畳は部屋いっぱいの大きなベッドであることに気づきます。部屋いっぱいに布団を敷いて寝るまたは、普段から寝袋で寝れば、布団すら必要なくなります。

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畳は部屋いっぱいの大きなベッドであることに気づく

もしかすると一人暮らしであれば、押入程度の広さがあれば寝るのは十分かもしれません。引越しは、本当に必要なものをもう一度見直してみる、よい機会になりそうです。

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一人暮らしであればベッドは押入程度の広さで十分。(MUJI×UR Plan 46 ハイタウン塩浜)

いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見お待ちしております。