「中鴨居照明」から考える暮らしの知恵

団地から考える暮らしの知恵100 | 2024.7.31

第四十六回
「中鴨居照明」から考える暮らしの知恵

今年も暑い夏がやって来ました。

団地の敷地には、たくさんの緑や高木、風通しの良いピロティなど、屋外でも過ごしやすい場所はたくさんありますが、やっぱり暑い日は、クーラーの効いた涼しい部屋で過ごしたいものです。

前回、団地の屋外でもリビングのように過ごせる「どこでもベンチ」を提案しましたが、春や秋など屋外で過ごすのに心地よい時期には最適ですが、さすがに暑い日が続くと屋外で過ごすにも限界が来てしまいます。

そして灼熱の夜は、窓を開けて過ごすのも難しいので、まったりとクーラーの効いた涼しい部屋で過ごしたいですよね。そんな熱帯夜も快適に過ごしてもらえるようなアイデアを考えてみたいと思います。

<暮らしの知恵(1)  ちょっとした工夫 – 中鴨居を利用した間接照明 ->

築40年、50年の団地の間取りは今でも和室が多いため、たくさんの「ふすま」で仕切られています。しかし、現代の暮らし方は、核家族や単身者も多いので、なるべく「ふすま」を外して、部屋と部屋をつなげて広いLDK空間と寝室がある1LDKの間取りとすることも多くなりました。

そうすると、元々部屋と部屋を間仕切っていた「ふすま」を外すことになるので、それらを取り付けるための溝が付いていた「敷居」「鴨居」が残ります。そして「鴨居」には、天井に直付けの「天鴨居」と「ふすま」と「らんま」の間にある「中鴨居」の2種類があり、「中鴨居」は空間に浮いたような形で残ることになります。(上記図参照)

MUJI×UR Plan03(多摩ニュータウン永山) リノベーション後も中鴨居はアクセントとしてそのままに

この「中鴨居」ですが、見た目や飴色に経年変化した姿は、ビンテージ感と共にお部屋に味を作ってくれますが、実はそれ単体では特に機能はありません。せっかく空間に浮いたこの部材を何かに役立てることはできないものでしょうか。

そこで、「中鴨居」の溝を利用してLED照明を設置してみてはどうでしょう。上向きの溝は元々「らんま」が入っていた溝で、深さは5mm程度なので、そこに薄いLEDテープライトを仕込むことで、天井を照らす間接照明とすることができそうです。

さらに、下の溝は、元々「ふすま」が入っていた溝で、深さは15mm程度あり、そこにLED照明を仕込むことで、作業用の照明になりそうです。

それらはスイッチで、上向きの間接照明、下向きの作業用照明と、切り替えることができれば、様々なシーンで使い分けることができそうです。

<暮らしの知恵(2)  あったらいいな – 中鴨居照明の下で家族で集う暮らし ->

※中鴨居には重たいものを吊り下げることができる強度はありません。
※ブランコを中鴨居から吊り下げるのは危ないので絶対に真似をしないでください。

具体的な使い方のシーンとしては、上向きの間接照明により天井を柔らかく照らす明かりの中で、畳の上で横になって、リラックッスした状態で、スマホでSNSや動画を見ながら過ごすこともできそうです。お子さんが小中高生であれば、下向きの作業用照明によって勉強ができます。もちろん食事をする際、ダイニングテーブルを照らすこともできます。さらに、家の中で暇を持て余しているお子さんには、あくまで妄想ですが、涼しいお部屋の中でブランコをして遊んで過ごすこともできるかもしれません。

元々部屋を分けていた「中鴨居」の溝は、今度は「分ける」のではなく、中鴨居照明の下で「家族をつなげる」役目を果たす装置になりそうです。

いかがでしょうか? このようなちょっとした知恵で素敵な暮らしが実現する「団地から考える暮らしの知恵」を随時発信していきます。みなさんのご意見をお待ちしております。

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