もしも古いマンションを「すっぴん」で買えたら
無印良品の考えるリノベーション | 2016.1.19
戸建て住宅でもマンションでも、新しく住まいを取得しようとするときに、「新築」ではなく古い家を「リノベーション」する方法を選ぶ、あるいは検討するという方が増えてきました。住まいのコラムでもリノベーションについて、多くの情報発信をしてきました。無印良品とUR都市機構による「団地リノベーションプロジェクト」は4年目を迎え、また、昨年の9月には無印良品 有楽町の店舗内に、「有楽町リノベーションセンター」がオープンし、個人向けリノベーション「MUJI INFLL0」の設計・施工請負サービスも始めました。
「リノベーション」と言っても、その方法は以下のような3つのパターンに分かれます。(リフォームとリノベーションの違いについては、こちらのコラムをご覧ください)
・いま住んでいるところを、リノベーションする。
・中古住宅を購入して、リノベーションする。
・リノベーション済みの中古住宅を購入する。
通常中古マンションを売るときには、「現状のまま」か「リフォーム/リノベーション済み」で売るかのどちらかです。「現状のまま」を購入して自分でリノベーションすることが、「中古住宅を購入して、リノベーションする」のパターンです。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、整理してみました。それぞれの項目ごとに、○はメリット、×はデメリットになります。
いま住んでいる住宅をリノベーション | 中古住宅を購入してリノベーション | リノベーション済みの中古住宅を購入 | ||
---|---|---|---|---|
1 | 住み替えも同時にできる | × | ○ | ○ |
2 | 長期/低金利の住宅ローンが使える | × | ○ | ○ |
3 | 自分の暮らしに合わせた空間につくり直せる | ○ | ○ | × |
4 | 解体してから不具合(雨漏り、水漏れ、構造など)に、事前に気づける | × | × | × |
5 | 解体してから、配管位置や下地が図面と違っていたなどの、計画変更の可能性に影響されない | × | × | ○ |
6 | 総予算がはっきりしている | △ | △ | ○ |
「6:総予算がはっきりしている」で「いま住んでいるところを、リノベーション」と「中古住宅を購入して、リノベーション」には、「5:解体してから配管位置や下地が図面と違っていたなどの、計画変更の可能性がある」ので△、「リノベーション済みの中古住宅を購入」は、それらも含めてリノベーション済みで価格をつけて売られているので、○としています。
こうしてみると、どのタイプでも、○もあれば×、つまりそれぞれにメリットもあれば、デメリットもある、というのがよくわかります。
「中古住宅を購入して、リノベーション」と「リノベーション済みの中古住宅を購入」の二つのパターンには、手間とコストをかけて自分の暮らしに合わせた空間をつくるか、手っ取り早くお仕着せでもよいから綺麗にお化粧直しされたものを買うかの大きな違いがありますが、両者に共通しているのは、どちらも解体後の部屋を見ずに購入するリスクがある、ということです。
具体的には、外からではわからない雨漏れや水漏れ、配管や構造体の欠陥などのリスクです。
では、もし中古マンションが「すっぴん」状態、つまり古い内装(=インフィル)を全て解体して、構造体と配管設備(=スケルトン)が剥き出しの状態で売られていたらどうでしょう?
購入する前に、下地の有無や状態、配管の位置や状況を確認できるので、リノベーションの施工計画も予算も確定できるだけでなく、何よりも「すっぴん」状態を確認してから購入できる、という安心感があるのではないでしょうか。
このパターンを先ほどの表に加えてみます。
いま住んでいる住宅をリノベーション | 中古住宅を購入してリノベーション | リノベーション済みの中古住宅を購入 | 中古住宅をスケルトン状態で購入してリノベーション | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 住み替えも同時にできる | × | ○ | ○ | ○ |
2 | 長期/低金利の住宅ローンが使える | × | ○ | ○ | ○ |
3 | 自分の暮らしに合わせた空間につくり直せる | ○ | ○ | × | ○ |
4 | 解体してから不具合(雨漏り、水漏れ、構造など)に、事前に気づける | × | × | × | ○ |
5 | 解体してから、配管位置や下地が図面と違っていたなどの、計画変更の可能性に影響されない | × | × | ○ | ○ |
6 | 総予算がはっきりしている | △ | △ | ○ | ○ |
なんと、全項目が○になってしまいました!(笑)
では、なぜこのような中古マンションの売り方が一般的ではないのでしょうか。
それは、「売る側」にはデメリットが増えるからです。内装(=インフィル)を解体撤去する費用をかけた後に、構造体と配管設備(=スケルトン)が剥き出しの状態が良い状況ではなかったら、それらを補修してからでないと販売できません(逆にそれが買う側には大きなメリットになるわけですが)。
なにより、「すっぴん」のスケルトン状態を見せられても、そこにどのような「住まいのかたち」が成立するのかを買う側がイメージできなければ、解体するお金と時間をかけた上に、売れるものも売れなくなるという大きなリスクが生じます。
一昔前ならこのような、スケルトン状態でのマンション販売は、実現することがほとんどありませんでした。
しかし、「リノベーション」が一般的になってきた今、スケルトン状態を確認してから購入できるという安心感だけでなく、余計な間仕切りや仕上げを全て取り払うことで、真っ白なキャンバスに絵を描くように、そこに自分の暮らしを想像しやすくなる、というような「住まいに対するリテラシー」の高い方も増えてきており、十分検討に値するのではないでしょうか。
このような、「中古マンションのスケルトン状態での販売」について、皆さんはどのように考えられますか? ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください。