住まうように旅をする 宿泊体験を 「MUJI room」で

コラム

住まうように旅をする 宿泊体験を 「MUJI room」で

2024.11.02

対談

コラム

住まうように旅をする 宿泊体験を 「MUJI room」で

リーベルホテル大阪は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンから徒歩約15分のところに立地しています。今回は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルライセンスの契約の満了をきっかけに、ホテルのリブランディングの一環で、無印良品のある暮らしを体感できる客室「MUJI room LIBER HOTEL」を作った取り組みです。
良品計画によるコンセプト提供と内装デザイン監修の下、銀座や北京などで開業したMUJI HOTEL はありますが、宿泊事業者からの依頼で既存のホテルの中にMUJI room を作った取り組みは初めてです。
対談のメンバーは、今回のプロジェクトの企画から運営までを行っている株式会社武蔵野の下田 健治さん、山川 実和さん、松谷 祐介さん。良品計画 空間設計部の設計担当の丹野洋之、インテリアデザイン担当の斎藤 奈未です。

海外のお客様から見た、無印良品の可能性

下田:当ホテルはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、 USJ)のオフィシャルホテルとしてオープンしましたが、ライセンス契約満了を機に、「リーベルホテル大阪」としてリブランディングすることにしました。現在もUS J のお客様が90% ほどを占めますが、2025年には大阪・関西万博もあり、長期滞在のインバウンドのお客様を新たに狙いたいという想いがあったんです。

松谷:海外のお客様から見てラグジュアリーでありながら、旅先でも家のような心地よさと安らぎを感じられる空間を作れるのはどこの会社さんだろう、と何度も話し合いました。そんな中でMUJI HOTEL を企画した良品計画さんに辿り着きました。

山川:私は予約受付全般を担当しているので、海外のお客様とお話しすることも多々ありますが、日本の方と海外の方では無印良品に対するイメージが異なります。日本の方はリーズナブルな生活雑貨のイメージをお持ちですが、海外の方には高品質な商品を提供するハイブランドというイメージをお持ちの方もいるようです。当社の戦略やお客様の宿泊価値を考えた時に、ぜひお願いしたいと思いましたね。

丹野:ありがとうございます。先ほど出てきたMUJI HOTEL GINZA は「アンチゴージャス・アンチチープ」をコンセプトに、旅先であっても日常生活の延長線上のように過ごせることを目指していますが、皆さんからお話があった時に、これはお役に立てるかもしれないなと思いました。リーベルホテル様の品質・ホスピタリティと、私たちが提供するMUJI roomを、どうマッチさせるのかは知恵を絞りました。

住まうように旅する

下田:私たちが最初にお願いをしたのは、誰が見ても無印良品であると伝わる客室デザインでした。今回Type A~D の4タイプのMUJI room を3 部屋ずつ作っていただきましたが、 Type A、 B は無印良品のイメージに忠実であること、Type C、Dは良品計画さんが考える上質な空間の実現をお願いしました。

丹野:まずは、お互いの無印良品らしさの目線合わせから始めました。その上で、無印良品らしい空間設計はもちろん、お客様には無印良品の家具や家電、生活雑貨を自由にご利用いただき、何度も足を運びたくなるような工夫をご提案させていただきました。周辺の観光地はもちろん、このMUJI room を目的に来訪いただくことが狙いになっています。

斎藤:合わせてご提案したコンセプトが「住まうように旅する」滞在体験の提供でした。無印良品を丸ごと体験いただき、家のようなくつろぎ感と気持ちよさを実感いただけたらという想いです。

山川:Type C、Dはグループ旅行でも対応できるように客室を設計していますが、お客様が同時に身支度ができるように鏡や洗面台の広さを設計していたり、親子で一緒に眠れるようベッドの幅を決めていたり、お客様目線での細やかな配慮には驚きました。

丹野:私たちは、生活者の視点でモノを考えることを大切にしているので、フロアでエレベーターを降りて、廊下を一歩ずつ進む時に、どんな景色が見えるのか、MUJI room の客室に入った瞬間から座る時、寝る時、何がお客様の視界に映るといいのかを、ずっと考えていました。特にType C、 D についてはグループでの宿泊なので、客室の中にお客様それぞれの居場所を作ることを大切にしました。

ループで宿泊しても、それぞれの心地よい居 場所を用意している。旅の思い出の語らいも。

地域性を出すために、素材は地域資源にこだわり近畿エリアのものを採用している。

木・金・土

丹野:空間デザインは、基本的に木・金・土で構成されていて、素のままを活かすデザインを大切にしています。今回も、素材はできるだけ地域資源や国産材にこだわり、環境への配慮を心がけました。客室の壁については、大阪府内の土を採用しています。

斎藤:皆さんからも、「“ここにしかない”要素として、地域のものを取り入れたい」とご要望をいただき、各部屋のテーブルやスツールなどは、近畿エリアの木材を使って家具を製作しました。このほかにもType C、Dで採用しているアートは、突板の端材を使っていたり。その土地の素材や循環素材を利用した空間づくりにこだわりながら、無印良品らしさを表現していきました。

丹野:開業はこれからですが、私たちが大切にしているデザインやサービスの姿勢と、皆さんが大切にされている価値観を都度確認して、一緒にこのプロジェクトを作り上げてきたので、今回のMUJI room は完成したと思っています。

下田:一緒にできたから、私たちも楽しかったですよ。毎週のミーティングでは、こちらからの相談に対して、良品計画さんとしての回答と根拠を持ってきて議論してくださったことは、非常にありがたかったですね。

斎藤:とても、嬉しいお言葉です。私たちの強みとして、家具や生活用品といったプロダクトのご提供から、施設のローカライズ化まで一貫性を持って取り組めることがあると思いますが、まさに今回の取り組みはそれがぴたりとはまった取り組みだったと思います。

一緒に育てていく

山川:MUJI room の開業はまだ先ですが、事前予約で、海外のお客様から5 連泊の予約が入ったんですよ。予約を開始して1 ヶ月ですが、すでに年末年始は満室の客室も出てきています。無印良品のブランド力を実感しました。
※取材時は予約のみ受付。MUJI room LIBER HOTEL の開業は2024 年12月1日。

下田:従業員からも開業を期待する声が出ているんです。先日は、MUJI roomのことを家族に伝えたという社員もいて。従業員満足度にもよい影響が出ていると思います。

丹野:それは嬉しいお話ですね。まだ絶賛工事中ではありますが、日々出来上がっていく様子に、私たちも開業が今から楽しみです。12 月の開業以降もリピートしたくなる客室作りに取り組んでいきます。今日は、本当にありがとうございました。