# 26 わたしのコツ – 最終回 –
2020年 3月 24日
2020年 3月 24日
前略、あおちゃん。お元気ですか?
金剛団地はもう桜が咲きはじめて、すっかり春が来たかな。
団地に引っ越してからはやいもので1年が経ったね。
いま、どんな気持ちですか?
50年前、60年前からずっと、その時代を生きた人たちに大切に住み継がれてきた団地。建物は古いけれど頑丈で、こまめに手入れされていて、遠くではしゃぐ子どもたちの声が聞こえる。部屋は間取りもデザインもシンプルで基本的なつくりだから、すこし工夫するだけでぐっと自分らしいくらしを送れること、もうあおちゃんは知ってるよね。
団地って古着みたい、って思ってたんだ。
たとえばちょっと昔の流行のもの、けれど丁寧につくられた質の良いものが、そんなに高くない値段で手に入るところとか。70年代や80年代に流行ったデザインや設えが、いまとてもかわいく見えて。
古着や団地には昔の丁寧なものづくりの痕跡や、流行したものの中にある本質だけが残ってる。だからじぶんの目を持っているひとにとっては、宝物のようなものなんだって。
だけどね、古着みたいって思うと同時に。
団地って「わたし」なんだ、って思ったんだ。
なにを言ってるかわからないって?
失礼しちゃう。まあ聞いてよ。
言いたいのは、これでじゅうぶんってこと。
団地にはきらびやかな装飾も、あっと驚くような便利な設備もない。水まわりはこまめな掃除が必要だし、エレベーターもないから大変。
でも、ちょっと目線を変えるだけで団地はほんとうに素敵な住まいになる。
白い壁を好きなふうに飾ったり、広い収納スペースを上手に使ったり。
掃除って本気でやるとけっこう楽しいじゃんって気づいたり、階段を駆け上がった先に見えた景色がとても好きだったり。
そんな小さなことだけど、そんなことひとつで、価値って変わるんだ。
わたしもね、くり返す日常に「これでいいのかな」って思うことがある。あおちゃんもあるでしょ? 知ってるよ。
今年もまた同じ夏が来るのかなって。ううん、違う。くり返す日常は自分次第で、どうとでも変わるんだ。今年の夏は、特別な一度きり。去年と同じひまわりは咲かないし、まだ出会えてない新しいわたしがいる。
明日はいつも違う今日で、退屈なんてことはひとつもないんだよ。こうじゃなきゃ幸せじゃない、なんてこともない。これでいい。心の置き方ひとつで、わたしの人生はすばらしいものになるんだって。
そんなことを思ったのは、団地ぐらしをはじめてからだなあ。ああ、わたしって楽しい。
金剛団地には思い出がいっぱいだね。巡る季節それぞれに愛しい記憶がある。
ひとりぐらしだと思っていたけれど、ぜんぜんひとりじゃなかったな。まわりの人に感謝しながら生きていかなくてはならないね。
ずっとここに住むのかはわからないけれど、今日もわたしは元気にすごしています。落ち込んだりもするけれど、ずっと元気だよ。
あなたの日記はまだまだ続くよ。
もっと日記帳がたくさんになって、読み返すのもひと苦労なんだから。楽しみにしておいてね。
じゃあ、その時までさようなら。
いつか会える、わたしより。
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