団地の商店街暮らし、はじめました

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お休み処「えがお」で活動する学生にインタビュー 建築学生編

2024年 8月 31日

お休み処「えがお」で活動する学生にインタビュー 建築学生編

こんにちは。前回に引き続き、花見川団地商店街の新しく生まれ変わったお休み処「えがお」で活動する学生さんのインタビュー第二弾です。
前回は千葉商科大学の中田さんにお話を伺いましたが、今回は、お休み処「えがお」の設計を担当した千葉工業大学の建築学科の学生さんたちをご紹介します。

お休み処「えがお」に関わってくださったメンバーは15名ほどいらっしゃるのですが、今回は特に活動していた斉藤くん、西方路くん、酒井さんにお話を伺います。当時は大学3年生・4年生でしたが、今は大学院で勉強中の3人です。

写真左から:西方路くん、酒井さん、斉藤くん

トーリー:斉藤くん、西方路くん、酒井さん、よろしくお願いします!
みなさんはいつから花見川団地の活動に参加していました?また、花見川団地の活動に参加したきっかけは何でしたか?

西方路くん、酒井さん:2023年の1月に初めて花見川団地を訪れたので、1年半ぐらい活動しています。斉藤くんだけ1ヶ月早く参加しました。

斉藤くん:きっかけは、千葉商科大学の中田くんとアルバイト先が一緒で(無印良品 津田沼ビート)中田くんから「花見川団地でDIYのリノベーションがあるから建築学生として何かできるかも」と活動に誘われて花見川団地にきました。
話を聞いた時に、学校の授業で建築の設計は学ぶことはできるけど、実際に設計したものをつくることができなかったので、活動に参加すれば良い経験ができるかもしれないと思い参加しました。

西方路くん、酒井さん:僕たちは斉藤くんから話を聞いて活動に参加しました。
建築学科の同級生と「建築会」という集まりをつくりましたが、斉藤くんと同じように学校には実技の場所がなかったので、活動に参加して自分自身と「建築会」メンバーの設計スキルを上げるために参加しました。

トーリー:確かに学生の時に自分たちで設計したものをつくれる場所は探してもなかなか見つからないですよね。それぞれの想いがあり花見川団地に来てくれていますが、初めて花見川団地に来たときはどう思いましたか?

酒井さん:最初はアウェー感があったのですが、花見川団地の活動に参加していた方たちが私たちの顔をすぐに覚えてくれたことが印象に残っています。今まで自分の地元でコミュニティのあたたかさに触れる機会がなかったので、顔をすぐに覚えてもらえたことがとても嬉しくて、私もみなさんの顔を一回で覚えました。

西方路くん:商店街が工事中でまだアーケードの屋根があったのですが、2回目に来た時に屋根が撤去されたことにより、光が入り、一気に明るくなったのが印象的でした。参加型の座談会ワークショップもみなさんの馴染んでいる空気感が心地良くて「いい場所だ」と感じたのでここだったら活動ができるかもと思いました。

斉藤くん:団地の雰囲気も落ち着いていていい場所だと思いましたし、ワークショップに参加していた方たちの活気が集まっていると感じました。地元の商店街はシャッター街になってしまっているのですが、花見川団地は団地に住んでいる方々の生活が滲み出ていると思いました。

トーリー:みなさん建築を学んでいるので、建築的な視点で建物のハードやコミュニティのソフトについて見ていたんですね。 先ほど話に出ていた「建築会」はどのような活動をしているのですか?「建築会」ができたきっかけも教えて欲しいです。

西方路くん:リノベーションに関わっていた当時は、千葉工業大学の建築学科の大学3年生の学生23人が参加していましたが、今は大学を卒業しているので大学院に進んだ一部のメンバーが活動をしています。

2022年の夏に同級生と一緒に全国の学生の中で良い設計が100人選ばれる建築課題をしていた際に、千葉工業大学の同級生で選ばれる人が少なかったという現実を受け、「自分たちの建築スキルをもっとあげないといけない」と話し合い「建築会」つくることになりました。

外の活動に参加することでスキルを上げたり、建築について一緒に考えたりできる集まりです。結成してすぐに、お休み処 「えがお」の話があったので、「えがお」のDIY・リノベーションが「建築会」の最初の取り組みとなりました。

トーリー:とても前向きな活動ですね。しかもお休み処「えがお」のリノベーションが良いタイミングで話がきたのがすごいですね。「建築会」として花見川団地で活動してきたことはどのようなことがありますか?

全員:「建築会」の15人で、お休み処「えがお」のリノベーションの設計と使い方の提案、DIYの工事、「えがお」のロゴづくりなどをしました。
リノベーションの進め方については、MUJI HOUSEの設計担当の方からこれからのお休み処「えがお」の使い方や計画の詳細を伺い、その内容を踏まえ「建築会」で考えた設計プラン6パターンを図面と模型にして提案をしました。それが2023年の2月から4月まで3ヶ月の間に商店会や花団メンバー、 MUJI HOUSEの方へ提案とブラッシュアップが続きました。

全員:お話を伺った当初は、空間の中の家具や什器のデザインをして欲しいと言われましたが、せっかくならもっと幅広く内装全体を設計できたらいいなと思い、家具や什器だけを設置する案と空間全体も考えた案を考えたため、設計プランが6パターンと多くなっていました。

トーリー:駄菓子を収納するためのバックヤードの壁と販売用の陳列棚の機能を兼ねた回転扉がとても面白いと思いました。あのアイデアはどうやって生まれたんですか?

全員:お休み処「えがお」の運営上、販売スタッフがいない時は駄菓子を収納しないといけないと聞いていました。計画段階ではカーテンで収納をする案が出てたので、別の案として考えたのが売り場とバックヤードの機能を合わせて使えるL字の回転扉です。

3回目の提案で出たアイデアの中に、自信があるものもあったのですが、商店会や花団メンバー、MUJI HOUSEの方からは、なんとなく考えた回転扉の評価が高かったので4回目は回転扉をベースに設計をしました。

回転扉や空間のつくり方が模型をつくっていても全然わからなくて。「本当にできるのかな?」と思っていたことを、大工さんやトーリーさんが解決してくれ、回転させるときの金具を知ったときは体に電気が走りました。(笑)
トーリーさんがつくり方も決まっていないのに「これはできる!」と言い切っていたことが嬉しかったです。

トーリー:どうやってつくるのかは全然決まっていなかったし、考えてもなかったのですが、プランが面白かったので絶対つくりたいなと思いました。回転させる金物も知らないのに実現できると思っていました。(笑)

トーリー:2023年7月に工事が開始して、約3ヶ月の間に大工さんの工事やみんなでDIYやワークショップをしてお休み処「えがお」を完成させていきましたが、活動をしてみてどうでしたか?DIYは大変でしたか?

斉藤くん:学校の課題では自分が設計した内容が成功なのかの良し悪しを先生が教えてくれますが、実際に使う人がどう思うかまでは分かりません。自分たちで考えたことが合っているのか?自分には合っていると思っているけれど他の人には違うのかな?と思っていました。
実際にお休み処「えがお」で手を動かしてつくることで、設計する際の考え方の視点が変わり、視野が広がりました。自分以外の誰かがどう使うのか?使いやすい?使いにくい?というのを今までよりも考えるようになりました。

酒井さん:自分たちがつくったプランや模型が実物になるのが初めての体験でした。特に大工さんとの墨出しがいい経験となりました。一軒家のように上棟式として、空間の中に屋根をDIYで付けた時はとても感動しました。
平日にお休み処「えがお」のサポートスタッフとして売り場に立ち、こどもたちに駄菓子の販売をすることがありますが、こどもたちが駄菓子を買っているのをみると鳥肌が立つぐらい感動してしまいます。設計から施工をすることはありますが、販売スタッフをすることはないので貴重な経験でした。

西方路くん:今までの設計では、「いい空間をつくろう」と考えて、好きな寸法で設計していました。建材の大きさ、合板は「910mm×1,820mmサイズでできている」など、今まで知識がなかったので、自由に設計をしていたのが、今では素材のサイズを調べて設計を考えるようになりました。
大工さんとの墨出しを行う際に、基準の線の「通り芯」を大事にして墨出しをしているのを見て、設計図面に書いていることの重要性も理解できましたし、図面に書いてある線を現場の床に書くことがこんなに大変なのだと知ることができました。

自分たちでDIYをしてつくったテーブルひとつひとつを見ると作業がとても大変だったことを思い出します。
図面では細部の設計をしていなかったのですが、「使う金具はどうする?」「屋根の幅はどうする?」など、細かいひとつひとつが設計なんだなと。それぞれの材料に、頑張ったことや考えたことを振り返ることができる思い出が宿っています。

トーリー:ものづくりの言葉で「神は細部に宿る」とありますが、僕も好きな言葉です。
最後の質問なのですが、最初に花見川団地に来た時と今とではイメージは変わりましたか?また、みなさんにとって花見川団地はどのようなところになりましたか?

西方路くん:とても変わりました。より活気がでたなと思いますし、ワークショップで話し合っていたことが実現化されていく、言ったままで終わらない場所だと思いました。
僕にとっては、花見川団地は「ハレの場所」のイメージです。別のところに住んでいるので、にぎやかな場所、お祭りの場所に来る感じです。
大学院を卒業して働きだしても絶対戻って来ますし、建築で独立ができたら花見川団地に戻ってきます!

酒井さん:活動を「他人事」として見ていたのですが、「自分ごと」としてみれるようになりました。イベントに参加される人が増えるのがとても嬉しく思います。
このまま、ものづくりの人生を歩んでいくなら、私にとって花見川団地はアナザースカイです!

斉藤くん:みなさんが団地の活性化を思う気持ちや取り組みの雰囲気を見て、この活動が未来の姿だと思いました。インターネットが発達して、ひとりでも生きていける時代でどこか寂しさもあるが、花見川団地はみんな一緒に活動している。みんなでお祭りやイベント、リノベーションをしている。本来の大切なことがこの団地にはあると思います。
みんなが自分を受け入れてくれて、頼む側でも頼まれる側でもこの地域の一部になれるので、なにもない日でもぷらっと行きたくなる場所です。僕にとって花見川団地は第二の地元です。

トーリー:お話しありがとうございます!これからも花見川団地のDIY部としても「建築会」としても花見川団地での活動をよろしくお願いします。

写真上左から:酒井さん、米澤くん、山岡くん、宮折くん
写真下左から:増田さん、斉藤くん、齋藤くん、西方路くん

「設計者」
安藤くん・伊藤くん・小川くん・沖山くん・斉藤くん・西方路くん・酒井さん・杉山くん・平瀬さん・増田さん・宮折くん・山岡くん・米澤くん

「施工協力」
齋藤くん・保木くん・堀江くん・平尾くん・中田くん・宮川くん・池上くん

以上。斉藤くん、西方路くん、酒井さんとトーリーでした。 次回学生さんのインタビュー最後は「お休み処 えがお」でオリジナルブレンドコーヒーづくりの活動をしている池上くんにインタビューです。

このブログについて

千葉県千葉市花見川区に、昭和43年にできたUR花見川団地
マンモス団地と呼ばれる、約5,700戸もある団地住人の生活のを支えているのが、花見川団地商店街。

その商店街に住みながら、新たな自由な暮らし方を発見する「団地の商店街暮らし」のレポートがはじまります。

いままでは商いが中心だった団地商店街で、どんな暮らし方ができるでしょうか。

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