vol.25 五感の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて福岡県糸島市へ。
東洋文化研究者のアレックス・カーさんが、せせらぎと虫の音を聴く「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2018.9.4

プロローグ

整然の美

人間が星空の下で大地に寝そべって眠ることを止め、洞窟で暮らすようになった時から、「ものとの戦い」は始まっていたのだろう。
洞窟の隅に骨や薪が溜まり、ものだらけになったら次の洞窟へ、という行為が繰り返され、人類は地球全体に広まっていったのかも知れない。戦いは今も続いているが、大抵は人が負け、ものが勝っているように思う。
僕が潔癖なのかも知れないが、家の中が整理されていれば、四畳半の一部屋でも居心地よく住める。
窓からの眺めが良いに越したことはないが、退屈な景色でも部屋の中がすっきりしていれば、お茶を一服飲んで寛ぐことができる。反対に庭付きの豪邸でも、ものが溢れ散らかった環境では落ち着かない。
美術品収集をこよなく愛する自分にとって、ものを減らすことは不可能だ。
しかし、掛軸を一本だけ掛け、他は棚にしまっていた昔の日本のように、片付ければ良い。
空っぽの部屋に、花一輪、壁に好きな絵一つ。そんな佇まいが何とも美しい。

Alex Kerr|アレックス・カー
東洋文化研究家/作家
1952 年生まれ。イエール大学で日本学を専攻。現在は京都・亀岡の矢田天満宮境内に移築された400年前の尼寺を改修して住居とし、そこを拠点に、国内をまわり、昔の美しさが残る景観を観光に役立てるためのプロデュースを行っている。著書に『美しき日本の残像』(新潮社)、『犬と鬼』(講談社)など。

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