vol.18 つながる家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて愛知県あま市へ。
建築家の大西麻貴さんと百田有希さんが
情趣ある家具と暮らす「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2015.6.9

「無印良品の家」に寄せて | 建築家 大西麻貴さん+百田有希さん

子どもと家

子どもが生まれたことをきっかけに、家について考える様になった、と言う話を聞くと、いつもいいなあと思います。新しいいのちを迎えるにあたって、これからの家族のこと、人生のこと、暮らしのことをもう一度考えて、そのための会話や、悩みや、行動や、決定が生まれる。そこには大きな愛情と夢があって、そんな前向きな一歩のために、家をつくるってすごいことだと感じます。

私たちは家を設計するのが好きです。おそらく、設計を通して家について話し合うのが好きなのだと思います。例えばお店を設計する、図書館を設計する、といっても家ほどに切実で、純粋な議論にはならないのではないでしょうか。家についての会話は、最終的に暮らしそのもの、さらには人の生き方につながる問いを私たちに投げかけます。出来上がった家の窓の位置や廊下の幅、部屋の並び方、庭との関係…そういったもの全てに、そのときの住まい手とつくり手のやり取りの痕跡や、悩んで描いた暮らしの在り方が、かたちとなって現れるのです。「若い頃に建てた家と、一緒に育ってきた」。40年暮らした家について、私の母は言いました。最初から完璧な家をつくることなんて出来ないけれど、初めに思いがあるからこそ、家と人とが一緒に時間を重ねて育つことが出来るのだと思います。

先日、自分が育った家を設計した方に会う機会に恵まれました。両親から話は聞いていたけれど、実際にお会いするのは初めてで、私にとって印象深い体験でした。家が建った当時、建築家はまだ27歳で、会社に勤める傍ら個人で初めて設計した住宅なのだと聞きました。当たり前なのかもしれませんが、家の構成からディテールまで様々な場所について知っていて、初めて会った人であるにもかかわらず、なんだかとても昔から知っているような不思議な感動を覚えました。家を通じて、こんな風に人と関係を結ぶことが出来るのだと嬉しくなると同時に、生まれ育った空間一つ一つに、愛情が込められていたことに感謝しました。

特に意識はしていなくても、家からは知らないうちにたくさんの影響を受けていると思います。私たちもいつか、設計した家で育った子どもたちと、家について話すときが来るでしょうか。あるいはそこで暮らす両親と子どもたちが、家について語り合うときが来るでしょうか。家の持つ懐の深さ、そこで育まれる時間の豊かさを思うと、やはり家っていいなあと思うのでした。[2015.6]