vol.15 練糸の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて群馬の織都桐生へ。
テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんが、
英国と日本をつなぐ「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2014.4.1

「無印良品の家」に寄せて | テキスタイルデザイナー 須藤玲子さん

窓の家、光の家

テキスタイルデザイナーとして活躍するKさんが家族と暮らす家は、桐生駅から徒歩数分に建つ「窓の家」。静かな住宅地の角に、芝生に包まれ、凛々しく建っている。家の周りに塀が無いので、家のフォルムが際立って見える。

家に入ると、一二階の各スペースは伸びやかに繋がっている。二階には、大小の二つのベッドルームと、それらが囲う様にバスルームとトイレがある。お嬢さんが遊び場としているバルコニーを左手に見て、一階へ続く階段は、窓からの採光がバランス良く、快適なスペースである。階段を降りると広いリビングルームがひろがり、大きな吹き抜けのあるダイニングルームへと続く。敷地面積は約60坪。延床面積は約25坪。都心では羨ましい一戸建て。

「ロンドンに住んでいたのです。友人達は手間暇かけて、自分の住まいをつくりあげ、楽しんでいました。私もそんな楽しみながら暮らしのできる家をつくりたかったのです」。現在、この地に越して来て2年、土地を探すときの基準は、やはりイギリスだったと言う。「玄関は北側に」設ける条件で土地を探したそうだ。彼と話をしながら、林望さんのエッセイを思い出した。林さんはイギリスについての書物を沢山出版している私の大好きな作家だ。彼の著作のひとつに『思想する住宅』という本がある。その中で、イギリスのアーツ&クラフト運動の建築家、ベイリー・スコットの設計したブラックウエル・ハウスをとりあげ、「暗い玄関が快適で面白い」と、北向き玄関の家を高く評価している。

なるほど、北側に玄関をつくると、光の違いを家の中に作り上げることができる。北側の安定した光をとりいれる工夫は、桐生の織物工場のノコギリ屋根も同じである。一日中安定した採光がとれるようにと北向きだ。そしてこのノコギリ屋根のルーツは、産業革命時代のイギリスといわれている。この家には、どこかイギリスと繋がる因子が満ちている。

「窓の家」は光の家でもある。「梅雨時の週末は窓ふき、夏は毎朝芝刈りをして、汗を流してから仕事へいきます。秋は気に入りの椅子に座り、音楽を聴いたり、デザインのアイデアを考えたりと、一年を通じて楽しんでいます」。様々な大きさで、家のあちこちに開いた窓からは、四季折々の景色、気配を感ずる事が出来る。それはあたかも、窓の景色がパッチワークのように、住空間を彩り、満たしている。

とてもシンプルに、キレイに片付いた空間には、大小の窓からこぼれる、外の気配が素直に入り込み、心地よい。胸にご主人がデザインした刺繍のアクセサリーを飾る穏やかな奥様は、「主人のこだわりが今は自分に乗り移って、余分なものは片付けるようになってきています」。ここの窓の家には、住まい方の作法があるように思える。

丁寧に、シンプルに暮らすことは、毎日毎日の積み重ねなくしてはできない。とても知的で、豊かで、贅沢な桐生ライフだ。[2014.4]