プロローグ

自然に依り、自然であること。

東京駅から長野新幹線「あさま」に乗って、軽井沢のひとつ先の佐久平へ向かった。「木の家」に住む人は、毎日この道程を2時間かけて会社まで通っているという。往復4時間かけて手に入れるものは、豊かな自然の恵みを享受する田舎暮らしの楽しみ?
さて、どんなこだわりを持ったライフスタイルなのだろうか。家をつくるときに考えるべきは、構造や内装、間取りや設備のことだけではない。その土地、その環境でどう暮らすかを今一度考え、これからの自分のライフスタイルをどう方向付けるかを見直すことが大切だ。
そこで肝心なのは、無理をしないこと。自分に正直に、好きなことを整理して、目指す方向をはっきりさせた、バランスのとれた生活スタイルこそが、本当に持続可能な自然な暮らし方なのだと思う。浅間山を望む土地で「木の家」に暮らす人。まるで都会のデザインマンションのようなインテリアと暮らし方は、想像していた「田舎暮らし」とはまったく違っていた。話しをお聞きするうちに、彼にとって無理のない、本当に自然なスタイルがこれなのだ、ということが分かった。
モノリスのようなデザインのテレビに合わせて開口位置にこだわったという小さな窓から、悠然たる浅間山がチラと顔をのぞかせていた。

亀井誠一|かめいせいいち
雑誌『カーサ ブルータス』編集長
1989年マガジンハウス入社。広告部、ブルータス編集部、
ギンザ編集部、カーサ ブルータス編集部を経て現職。