vol.2 育つ家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて早春の佐賀へ。
『暮しの手帖』編集長、書店オーナーの松浦弥太郎さんが、
Mさん家族が暮らす見晴らしの良い家に会いに行きました。

施工例 | 2010.4.9

プロローグ

ぼくは家と、家族と、ひとつになる。

家の中が見渡せる風通しの良い階段に腰かけるのが好きだ。
そこから大きな窓の外に目をやれば、遠くに木々が生い茂った森があり、その下の細い小道を歩く犬を連れた子供の姿が見える。空はどこまでも広く、長く、誰かの名を大きな声で呼びたい気持ちになる。ぼくは子供が道端に座ってよくそうするように膝を抱えて、あごに手を置いて、ぼんやりと、家と、家を取り巻く美しい世界をいつまでも見渡している。わがままかもしれないけれど、家族と一緒にいながらも、こんな風に一人になれる家がぼくは好きだ。一人になるということは、家と、家族と、ひとつになれることだとぼくは知っている。
洗い立ての白いコットンシャツを着て、地中海の青さを思わせるやわらかくなったデニムをはいて、友だちがやってくるのを待っている。今日。

松浦 弥太郎|まつうらやたろう
『暮しの手帖』編集長・文筆家・COW BOOKS代表
1965年生まれ。東京都出身。18歳で渡米。
アメリカの書店文化に関心を持ち、幅広く編集や執筆活動をはじめる。
1996年に帰国後、中目黒に古書店「エムアンドカンパニーブックセラーズ」を開業。トラックによる移動書店で話題を集める。
2002年、中目黒に「カウブックス」を開業。ファッションブランドのカタログ冊子、雑誌連載、単行本などの編集を活発に手がける。
2006年10月より『暮しの手帖』編集長に就任。著書多数。