トップクラスの断熱性能

コラム | 2014.5.13

間仕切りがなく、家の中央にスケルトン階段を配し、1階は広い土間スペース、さらに北面の道路側に大きな窓、という「縦の家」のCASE7プランは、冬寒く、夏暑いのではないか? 多くの方々がそういう疑問を抱かれるのではないでしょうか。

実はこの、間仕切りがないことやスケルトン階段、そして土間スペースまでが、この家全体を隅から隅まで均一に暖かく(涼しく)するのに一役買っているのです。今回は、「縦の家」の断熱性能についてお話します。

無印良品の家が目指している家は、「縦の家」に限らず「木の家」「窓の家」にも共通して、「丈夫で長持ち、快適で簡素な箱であること」です。つまり、家は暮らしのプラットホームとして、なるべくシンプルな、そして高性能な箱である、ということです。

「丈夫で長持ち」は、構造計算長期優良住宅の認定などの客観的判断が可能ですが、「快適」は個人差によるところで、その要件は多種多様です。
しかし、「昼間、照明に頼らなくても明るい」「エアコンに頼らなくても夏涼しく冬暖かい」「風通しが良い」というのは誰にとっても快適、言い換えれば、これらは「快適で簡素な箱であること」の基本性能であると、私たちは考えています。

日当たりや風通しの厳しい都市部の土地でも、この快適であるための基本性能はあきらめたくない、というのが「縦の家」の開発動機でした。
「縦の家」は、敷地によっては窓を南側に限定せず、たとえ北側でも採光や通風を確保できるところに大きな窓を取っても、寒くならない家にするためのさまざまな知恵と工夫がつまっています。

なるべく設備に頼らずに、太陽の熱と光、風をうまく利用した設計と、室温のエネルギー量の数値化、さらに家族構成、エアコンをつける時間帯や設定温度、窓を開けるタイミングや庭の木の提案など、無印良品の家は一つの家ごとに、暮らしに合わせた快適温度を提案する全棟温熱シミュレーション「+AIR」を実施しています。

この全棟温熱シミュレーション「+AIR」で、「縦の家」CASE7プランをシミュレーションしてみましょう。

建設地(東京都荒川区)の気象データに基づき算出した、「縦の家」の冷暖房に必要な床面積当たり年間エネルギーは、212.4(MJ/m²・年)で、これは、省エネルギー対策等級が最高等級の家に求められている東京での冷暖房エネルギー(=460MJ/m²年)の半分以下であり、それだけ省エネルギー性に優れていて、かつ室内の温度変化が少ない快適な家ということになります。

どうしてこんなに少ないエネルギーで快適な室温を保つことができるのか。そのひとつは、太陽の熱と光、風をうまく利用して快適さをつくり出すパッシブデザインの家であること。そして、もうひとつは家の断熱性能の高さにあります。

Q値とは、家の断熱性能を表す数値です。この値は、断熱材(素材と厚さ)、断熱の方法、窓や玄関ドアの断熱性能、換気方法などで算出します。
「縦の家」のQ値はCASE7プランQ値1.86という、建設省の定める「次世代省エネルギー基準」の最高等級Q値2.7を大きく上回る、高いレベルを達成しています。そして、この高い断熱性能を得るために、全面的に新しい技術を採用しています。

これらの新しい技術をご紹介しましょう。

断熱材(素材と厚さ)
断熱材は、木質のパネル状断熱材とクッション状断熱材の2種類を新たに採用しました。環境にも人にもやさしく、また調湿・透湿機能があるので、結露を抑制し、さらに炭化することで、火にも強いとういう特長があります。
この断熱材を構造柱の外側に貼り、さらに構造柱の間にも充填して、トータルの厚みが120㎜にもなる「ハイブリッド断熱(付加断熱)」とすることで、外壁の断熱性能を大幅に強化しています。

断熱方法
外壁まわりは、上で述べたようにハイブリッド断熱(付加断熱)とした上で、さらに最上階は「屋根断熱」、1階下は「基礎断熱」を採用しています。
「屋根断熱」とは、通常最上階は、天井上にグラスウールなどを置いて断熱するところを、屋根材の直下にパネル状の断熱材を貼りめぐらす方法です。こうすることで、小屋裏に熱が溜まることを防ぎ、特に夏に最上階が暑くなることを防ぎます。

「基礎断熱」は、通常は、1階の床の直下に断熱材を入れるのですが、縦の家では基礎コンクリートの外側に特殊な断熱材を貼りめぐらしています。これにより、蓄熱性に富むコンクリートが室温と同じ温度を保とうとし、室内温度を安定させる役割を果たしてくれるので、特に冬の1階の冷えを緩和するのに効果的なのです。また、この方法だと、CASE7プランのように土間を積極的に活用しても、土間コンクリートが冷たくならず、むしろ部屋の温度を蓄熱して、室温をあたたかく保ってくれるのです。

窓や玄関ドアの断熱性能
窓は、光や風を通す大事な役目を担っていますが、熱も通すため、窓から熱が逃げやすく、侵入しやすいものです。ここにも知恵が必要です。

「縦の家」では12mm空気層を持つペアガラスだけでなく、アルミ枠からの熱さえも伝えないように、内側の枠は樹脂性としている高断熱ハイブリッドサッシを使用しています。さらに、冬の夜や夏の日差しがきついときに威力を発揮する、「断熱スクリーン」が窓にあらかじめ設置されています。
このハニカム構造の断熱スクリーンが、窓辺の熱の 出入りを防ぎ、断熱・省エネ効果をさらに上げています。また吸音効果も高く、都心ならではのプライバシーを守りつつ、家全体を断熱スクリーンからのやわらかな光が包み込みます。
窓と同様に、玄関ドアも熱の逃げやすい場所です。「縦の家」では、硬質ウレタンを中心に数枚の単板にガルバリウム鋼板をサンドイッチすることにより、高い形状安定性、断熱性、遮音性、強度、耐火性を同時に実現している、特殊な多重構造玄関ドアを採用しています。
防火設備としての認定を取得していながら、かつ、1.53w/m2kという高い断熱性能を備えています。

換気方法
「シックハウス症候群」が問題になってから、日本の住宅は「24時間換気」が義務付けられています。家の大きさによって換気量は異なりますが、床面積100m²(30坪)ほどの家の場合で、1時間におよそ1500m²の室内空気を入れ替えることが義務付けられているのです。

150?の換気量と言われてもピンと来ないかもしれませんが、トイレに付けるパイプファン3台が常に動いている状態と思っていただければ良いと思います。1階と2階のトイレと、化粧室の換気扇3台が、「24時間換気扇」となっている(スイッチが切れなくなっている)場合が多いのはこのためです。
この換気扇は室内空気を排気するだけですので、リビングや寝室にフィルター付きの自然給気口がついていて、ここから新鮮な空気が入ってくる仕組みを「ダクトレス第3種換気(排気のみモーターファンを用いる換気)」と言って、関東以西では最も多くみられる仕組みとなっています。

この仕組みは通常は、合理的でよくできた換気方法なのですが、これまでご紹介したように、都市部専用としてあらゆるところで断熱性能を上げている「縦の家」にとって、冬に(夏に)室内温度より20℃前後低い(10℃前後高い)外気が、ゆるやかにではあっても、直接入ってくるのは、見過ごせません。

そこで、東北より寒い地域などで使われるところの多い、「熱交換型第1種換気」を採用しています。
通常の熱交換型第1種換気システムは、室内空気をダクトで1か所に集めて、入ってくる外気と熱を交換しながら(冬の場合、暖かい室内空気で外の冷たい空気を暖めながら)換気する仕組みになっています。
しかし、このシステムは給排気用の太いダクトを家中に回さなければなりません。少しでもスペースを無駄にしたくない「縦の家」には不向きなことと、排気だけでなく、給気にも使われるダクト内の汚れやカビの発生のリスクも避けるために、「ダクトレス」でありながら、「熱交換型1種換気」が可能、という新技術を採用しました。

このシステムは、右の様な構造になっていて、1台で排気と給気を切り替えながら、室内空気を入れ替えます。ファンにセラミック製の蓄熱エレメントが接続しているので、室内空気に近い温度に蓄熱され、外の空気を室内温度に近い温度に暖め(冷やし)ながら給気するというすぐれものです。
ダクトレスで配管は不要、メンテナンスが非常に簡単、熱交換率最大91%と、縦の家にぴったりの換気システムと言ってよいでしょう。

いかがでしょうか。なじみのない数値が出てきて、少しわかりづらいところがあるかもしれませんが、家全体の断熱性能を高めるために、できることは全てやっているのが「縦の家」なのです。
これらの積み重ねで、東京都荒川区(Q値エリアIV地域)の「縦の家」CASE7プランQ値1.86という高性能住宅が実現できたのです。

少々面倒なお話しにおつきあいいただき、ありがとうございました。
そこで、「いろいろ新しい技術を導入して、断熱性能がずば抜けているのは、良く判った。で、だからなんなの?」「そこまで断熱性能必要なの?」という方のために、次回、この「縦の家」の断熱性能が、ここでの暮らしに何をもたらすのか、じっくりお話ししたいと思います。ご期待下さい。